プラスチック製品の試作工法4選!使われる材質や手戻りを減らすコツも解説

高品質なプラスチック製品を開発するためには、適切な試作工法を選ぶことが重要です。しかし「どの工法を選べばいいかわからない」「試作段階で思わぬ手戻りが発生してしまう」と悩んでいる方も多いでしょう。

そこで、この記事ではプラスチック製品の試作工法4選を紹介します。使われる材質や手戻りを減らすコツについても解説するので、設計や開発に携わる方は最後までご覧ください。

プラスチック製品の試作工法

プラスチック製品の試作で使われる工法は、主に次の4つです。

  • 射出成形
  • 真空注型
  • 切削加工
  • 3Dプリンター

射出成形

射出成形は、溶かした樹脂を金型に注入し、冷却して固める工法です。量産時と同じ熱可塑性樹脂を使用できるため、製品の強度や機能、外観を本番とほぼ同じ条件で検証できます。

しかし、成形用の型を設計・製作する必要があり、実物を手にするまでに数週間から数ヶ月の待ち時間が発生することも珍しくありません。最初に型を作る手間や初期コストはかかりますが、いったん型が完成すれば同じ形状を短時間で大量生産することが可能です。

数量が増えるほど1個あたりの単価を下げやすいため、設計の最終段階でまとまった数のサンプルが必要な場合や、量産工程の再現性を事前に確認したい場面に向いています。

関連記事:プラスチック成形による試作開発と金型の基礎知識

真空注型

真空注型は、シリコーンゴムで作られた型に樹脂を流し込み、製品を作る工法です。まず3Dプリンターや切削加工でマスターモデル(原型)を製作し、それを転写して作ったシリコーン型を使用します。

高価な金属製の型を製作する必要がないため、10〜20個程度の小ロットであれば、コストを抑えつつ短期間で実物を用意できます。また、微細な凹凸や外観のデザインも転写しやすく、塗装や表面処理などの後工程と組み合わせれば、見た目を量産品に近づけた評価も可能です。

そのため、見栄えを重視する展示会用サンプルや、社内検証用の小ロットサンプルを迅速に揃えたい場合に適しています。

弊社では、一般的に射出成形で用いられることが多い「6ナイロン」を使用した真空注型を行っています。高強度かつ耐熱性のある試作品を作りたい方は、ぜひ弊社の真空注型技術を解説したページをご覧ください。

切削加工

切削加工は、ブロック材を工具で削り出し、目的の形状に仕上げる工法です。射出成形や真空注型のように型を必要としないため、加工データさえ完成すれば即座に製作を開始できます。

刃物を物理的に移動させて形状を作る特性上、成形品と比べて寸法精度が安定しやすく、精密なはめあいや可動部のチェックに最適です。また、多様な材質に対応しており、量産時と同じ材料で検証を進められる点も大きなメリットといえます。

一方で、余剰部分を切りくずとして除去するため、材料ロスが発生しやすい点には注意が必要です。

関連記事:切削加工で試作を依頼する手順!メリットや事前に相談すべきことも解説

3Dプリンター

3Dプリンターは、設計データをもとに樹脂の層を積み重ねて形を作る工法です。型や切削用の治具を必要としないため、短納期で試作品を用意しやすく、設計変更にも柔軟に対応できます。

また、複雑な内部形状や中空構造など、従来の工法では製作が困難だった形状も再現できるのが特徴です。しかし、積層痕が外観評価の妨げになりやすく、積層方向に対して強度が弱くなりやすいという欠点があります。

弊社では、粉末造形方式の3Dプリンターを活用し、プラスチック試作品を製造しています。強度と耐熱性に優れたガラス入り6ナイロンを使用することで、実働試験にも耐えられる高品質なパーツの提供が可能です。

また、粉末造形は積層ピッチ(層厚)が小さいため、一般的な3Dプリンターよりも造形方向による強度のばらつきが少ないというメリットがあります。3Dプリンターでの試作を検討している方は、弊社の粉末造形技術をまとめたページもご覧ください。

プラスチック試作品に使われる材質

プラスチック試作品に使われる材質は、大きく分けて次の3つです。

  • 汎用プラスチック
  • 汎用エンプラ
  • スーパーエンプラ

それぞれの種類や特徴について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

関連記事:【プラスチックの種類と特徴】樹脂基礎│樹脂製品開発のための必須知識

汎用プラスチック

汎用プラスチックは、耐熱温度が概ね100℃未満で、加工性に優れた安価なプラスチックの総称です。代表的な材料にはABSやPP(ポリプロピレン)、PS(ポリスチレン)などがあり、家電製品の外観パーツや日用品といった身近な製品に幅広く採用されています。

材料コストを抑えられるため、サイズ感の確認やデザインの検討には有用な素材です。しかし、耐熱性や強度は高くないため、高温環境や負荷がかかる箇所で使用すると破損する恐れがあります。

汎用エンプラ

汎用エンプラは、耐熱温度が概ね100℃以上で、汎用プラスチックよりも強度に優れたエンジニアリングプラスチックの総称です。代表的な材料には、高い靭性を持つPA(ポリアミド)や、耐摩耗性に優れたPOM(ポリアセタール)などがあります。

家電製品の機構部品や自動車の内装部品など、機能性が求められる用途で幅広く採用されています。強度が必要な部品でも使用しやすく、実際の使用環境を想定した動作確認やはめあいの検証も進めやすい点がメリットです。

一方で、材料コストは汎用プラスチックより高価になるため、検証の目的に応じて使い分ける必要があります。

関連記事:ナイロン(ポリアミド)の種類・特性・用途│主なナイロン製品の製造法

スーパーエンプラ

スーパーエンプラは、耐熱温度が概ね150℃以上で、高温下での機械特性や耐薬品性などに優れた高機能なエンジニアリングプラスチックの総称です。代表的な材料には、高い耐熱性と機械的強度を持つPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)や、寸法安定性や耐薬品性に優れたPPS(ポリフェニレンサルファイド)などがあります。

航空宇宙部品や医療機器など、極めて過酷な環境下で使用される部品において不可欠な素材です。試作においては、金属パーツの樹脂化を検討する際の最終的な機能検証や、特殊な条件下での実働試験に用いられています。

ただし、材料単価が高く、成形や加工に専門性が求められるため、試作コストが膨らみやすい点には注意が必要です。

プラスチック試作で手戻りを減らすコツ

試作をスムーズに進めたい方は、以下の5つの方法を試してみてください。

  • 物性値をもとに材料を選定する
  • 比重から重量を見積もる
  • 肉厚設計の基本を押さえる
  • 用途に応じた表面粗さを設定する
  • 残留応力を緩和する

物性値をもとに材料を選定する

試作の段階で、想定外の破損や熱による変形が起きると、設計変更や作り直しといった大きな手戻りが発生します。これを防ぐためには、材料選定を感覚ではなく物性値をもとに行うことが重要です。

具体的には、量産で使う材質と試作で使う材料を、引張強さ・曲げ弾性率・圧縮強度などの物性値で比較してみてください。さらに、電子機器や医療機器に関わる用途では、誘電率や耐アルカリ性といった特性の確認も不可欠です。

必要な物性値から候補を数種類に絞り、比較して最適な材料・工法を選ぶと、後工程でのやり直しを未然に防げます。

関連記事:【プラスチック基礎】物性値の見方│6つの性質で特徴をつかむ

比重から重量を見積もる

試作品が出来上がってから「想定より重い」「軽すぎて剛性が足りない」と感じるケースは少なくありません。重量は見た目では判断しにくく、材料変更や肉厚調整で大きく変動するため、試作前に比重をもとに概算することが大切です

3Dデータから算出できる体積に材料の比重を掛けることで、完成時の重さを事前に把握できます。たとえば、比重が0.9前後のPP(ポリプロピレン)と、1.05前後のABSでは、同じ体積の場合ABSのほうが重くなります。

体積が1,000 cm³の場合、重量が0.9kgと1.05kgになるため、手に持ったときの質感に大きく影響するでしょう。また、重量をあらかじめ把握しておくことは、梱包資材の選定や輸送コストのシミュレーションを行う際にも役立ちます。

関連記事:比重とは?比重と密度の違いや重量計算をおさらい【製品開発のためのプラスチック基礎】

肉厚設計の基本を押さえる

射出成形や真空注型の場合、特定の箇所だけが極端に厚かったり、急激に厚みが変化したりすると、冷却時間の差によって凹みや反りといった成形不良を引き起こしやすくなります。そのため、可能な限り肉厚を一定に保つことが重要です。

もし強度を上げたいのであれば、厚みを増やす代わりにリブ(補強の壁)を立てることで、軽量化と剛性を両立させられます。また、厚肉部から薄肉部へ変化させる場合には、境界を緩やかな斜面(テーパー)にするなど、樹脂の流れを妨げない工夫も欠かせません。

用途に応じた表面粗さを設定する

表面粗さが想定と合っていないと、見栄えが損なわれたり使用感が悪くなったりして、適切な検証を行えません。外観だけでなく、可動部では摩擦や摩耗にも影響するため、用途に応じた表面粗さをあらかじめ決めておくことが手戻り防止につながります。

具体的には、意匠面はマット調にして反射を抑えるのか、光沢を出して高級感を演出するのかといった方向性を先に定め、そのうえで粗さを検討します。機能面では、表面が滑らかすぎると潤滑剤を保持できず動作不良を招く恐れがあるため、使用条件に合わせて適切な粗さを設定することが重要です。

残留応力を緩和する

試作で形状や寸法が狙いどおりでも、時間が経ってから反りが出たり、ねじ締結部が割れたりする場合があります。その原因の一つが、成形や加工の過程で内部に残る残留応力です。

残留応力が大きい状態では、温度変化・外力・薬品の影響を受けたときに応力が解放されやすく、変形や亀裂につながる恐れがあります。試作段階で残留応力を意識しておくと、評価後に起きる不具合を減らし、量産移行時の品質も安定させやすくなります。

関連記事:プラスチックの反りを引き起こす「残留応力」とそれを緩和させる「アニール処理」とは?

プラスチック試作に関するよくある質問

プラスチック試作を検討している方は、よくある質問も参考にしてみてください。

  • 量産移行時に選ぶ工法は?
  • 剛性を高めたいときは?
  • ナイロン6と66の違いは?

量産移行時に選ぶ工法は?

プラスチックの量産で最も一般的なのが、金型を用いて大量生産を行う射出成形です。数千から数万単位の製品を効率よく、均一な品質で製造できる点がメリットといえます。

しかし、数十個程度の少量生産であれば、高価な金型を必要としない真空注型や切削加工のほうがトータルコストを抑えられる場合も少なくありません。そのため、目標とする生産数や要求品質、使用する材料などをもとに工法を決める必要があります。

関連記事:【樹脂成形】プラスチック量産方法の種類と特徴

剛性を高めたいときは?

プラスチック部品の剛性を高めるには、形状の工夫と材料の選定という2つのアプローチがあります。形状面では、肉厚を増やしたり、リブ(補強の壁)を配置したりという設計上の工夫が有効です。

材料面では、ガラス繊維やカーボン繊維を配合した強化プラスチックを採用することも選択肢になります。これにより、ベースとなる樹脂の特性を活かしつつ、曲げやねじれに対する剛性を向上させることが可能です。

関連記事:【強化プラスチック】GFRP CFRP FRPとは?強化プラスチックの種類や特性。

ナイロン6と66の違いは?

ナイロン6とナイロン66は、どちらもポリアミド系のエンジニアリングプラスチックですが、特性に違いがあります。一般的には、ナイロン6のほうが耐衝撃性に優れており、加工性も良好なため、汎用的な工業製品で採用されることが多いです

一方で、ナイロン66は耐熱性や剛性がより高いため、高負荷な環境下で採用される傾向があります。ただし、どちらも吸水によって寸法や強度が変化する性質があるため、設計時にはその影響を見越しておくことが重要です。

関連記事:ナイロン6、66、11、12の違い│ポリアミドの比較【エンプラ】

まとめ

この記事では、プラスチック製品の試作工法や手戻りを減らすコツについて解説しました。用途に合った工法を選ぶことで、開発にかかる時間や費用を抑えることが可能です。

また、材料の特性や設計の基本を正しく理解しておくと、量産段階でのトラブルを未然に防げます。そのため、手戻りを減らして開発をスムーズに進めたい方は、この記事を参考にしながら自社に合った工法や材料を検討してみてください。

もし「どの工法で試作すべきかわからない」「量産を見据えた材料選びが難しい」と悩んでいる場合は、専門業者に相談するのも効果的です。弊社では真空注型や粉末造形をはじめとした加工技術を活用し、強度と耐熱性に優れたプラスチック試作品を製造しています。

プラスチックの特性を熟知した職人が、機械では調整しづらい微細な箇所も手作業で対応しているため、設計意図を反映した試作品に仕上げることが可能です。弊社の加工技術を詳しく解説した記事も公開しています。

ご興味をお持ちの方は「お問い合わせフォーム」よりお気軽にご相談ください。