ナイロン(ポリアミド)の種類・特性・用途│主なナイロン製品の製造法

ナイロン6インマニ(ナイロン注型・粉末造形)

ナイロン(ポリアミド)は私たちの生活に身近な樹脂で、広く普及しているプラスチックの一つです。

ナイロンは衣料や日用雑貨でも多くみられますが、全体需要量の35~40%は自動車・車両向けに使われており、ナイロン樹脂の最大の市場となっています。

今回は、工業製品の材料として様々な用途で使用されるナイロンに注目し、

  • ナイロンの種類
  • ナイロンの特性
  • ナイロンの用途
  • ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12の特徴
  • ナイロン製品の製造方法

などをまとめてみました。

  • ナイロン製品の製作をお考えの方
  • 適性なナイロンの種類の選定をしたい方
  • 材料知識を増やしたい方

是非ご参照ください。

ナイロンの種類

ナイロンとポリアミドの違い

ナイロンは「ポリアミド」と呼ばれたり、「PA」と記述されていたりすることがあります。

「ナイロン」と「ポリアミド」の違いは?


「ナイロン」は開発した米デュポン社の商標名で、正式名は「ポリアミド」といいPAと表記されます。日本では一般的に「ポリアミド」より「ナイロン」という呼び方のほうが浸透しています。

「ポリアミド」でも、一般に脂肪族骨格を含むポリアミドのことを「ナイロン」、芳香族骨格だけで構成されるポリアミドを「アラミド」と言います。

ポリアミド系樹脂説明図(ナイロン・アラミド)
ポリアミドはアミド結合によって多数のモノマーが結合してできた線状の高分子です。一般に脂肪族骨格を含むポリアミドをナイロンと総称し、芳香族骨格のみで構成されるポリアミドはアラミドと総称される。

またナイロンは原料の組み合わせにより多くの種類があり、ωアミノ酸の組み合わせで合成される「n-ナイロン」(開環重合)と、ジアミンジカルボン酸の組み合わせで合成される「n,m-ナイロン」(縮合重合)とがあります。

  • n-ナイロン ・・・・・ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12 など
  • n,m-ナイロン ・・・ ナイロン66、ナイロン610 など

n-ナイロン(開環重合)

  • ナイロン6:ε-カプロラクタム(炭素数6
  • ナイロン11:ウンデカンラクタム(炭素数11
  • ナイロン12:ラウリルラクタム(炭素数12

n,m-ナイロン (縮合重合)

  • ナイロン66 :ヘキサメチレンジアミン(炭素数6+ アジピン酸(炭素数6
  • ナイロン610 :ヘキサメチレンジアミン(炭素数6+ セバシン酸(炭素数10
  • ナイロン6T :ヘキサメチレンジアミン(炭素数6+ テレフタル酸 (Terephthalic acid)
  • ナイロン6I :ヘキサメチレンジアミン(炭素数6+ イソフタル酸 (Isophthalic acid)
  • ナイロン9T :ノナンジアミン(炭素数9+ テレフタル酸 (Terephthalic acid)
  • ナイロンM5T :メチルペンタジアミンMethyl基+炭素数5+ テレフタル酸 (Terephthalic acid)

※開環重合とは、単量体が環状構造をしていて重合の際、環を開きながら結びついて重合すること。

※縮合重合とは、同一分子の中に複数の化合物が互いの分子内から水 (H2O) などの小分子を取り外しながら結合(縮合)し、分子の間で反応が起こって高分子化合物が生成(重合)すること。

ちょっとややこしいですね。

ナイロンは結晶化の樹脂で多くの種類があり、結晶化の度合いで物性も変わってきます。

最初はまず、代表的な「ナイロン6」と「ナイロン66」を押さえておきましょう。

次にナイロンの特性を見ていきます。

n,m-ナイロン (縮合重合)

  • ナイロン66 :ヘキサメチレンジアミン(炭素数6+ アジピン酸(炭素数6
  • ナイロン610 :ヘキサメチレンジアミン(炭素数6+ セバシン酸(炭素数10
  • ナイロン6T :ヘキサメチレンジアミン(炭素数6+ テレフタル酸 (Terephthalic acid)
  • ナイロン6I :ヘキサメチレンジアミン(炭素数6+ イソフタル酸 (Isophthalic acid)
  • ナイロン9T :ノナンジアミン(炭素数9+ テレフタル酸 (Terephthalic acid)
  • ナイロンM5T :メチルペンタジアミンMethyl基+炭素数5+ テレフタル酸 (Terephthalic acid)

ナイロンの特性

「ナイロン」は樹脂では弱点でもある耐熱性を改善したエンジニアプラスチックで、耐熱性・機械特性・耐薬品性など優れた特性を持つ高機能樹脂の一つです。

ナイロン(ポリアミド)の特徴

  • 機械的性質に優れる
  • 靭性が高い
  • 耐衝撃性に優れる
  • 摺動性に優れる
  • 耐疲労性に優れる
  • 耐油性・耐薬品性に優れる
  • 耐摩耗性に優れる
  • 耐熱性が高い

ポリアミド系樹脂は種類も多く、GF、CF、タルクなどの補強材・充填剤などを配合することにより物性も強化できる万能な材料です。

↓↓↓こちらのサイトとても参考になります

ナイロン樹脂の用途

ナイロンは米デュポン社により開発され「蜘蛛の糸より細く、絹よりも美しく、鋼鉄よりも強い」といわれ、合成繊維として、ストッキングに用いられたのが最初です。

高い靱性や優れた耐摩耗特性を持ち、染色性にも優れていることから衣類の素材として有名ですが、ナイロンの優れた機械的特性から工業用製品に広く使用されています

■ナイロンの用途

ナイロン用途のグラフ

自動車・車両部品

  • 全需要量の35~40%
ナイロン用途(自動車部品)

自動車の部品は、耐ガソリン性、耐オイル性、耐薬品性、耐熱性、強靭性などが要求されることが多く、エンジンルーム内の部品や吸気系部品、燃料系部品など幅広い用途で使用されます。

電気・電子機器

  • 全需要の20~25%
ナイロン用途(電子部品)

産業用機器のコネクター、スイッチ、ハウジングなど難燃性が要求される部品に使用されます。

押出成形品

  • 全需要量の20%

フィルム、シート、パイプ、板、丸棒、チューブなど切削加工用などの素材としての押出成形品としての用途に使用されます。

非工業品

  • 全需要量の10~12%
ナイロン用途(日用品)

日用雑貨、容器、玩具、建築資材、スポーツ用具などの用途に使用されます。

ナイロン6,ナイロン66,ナイロン12の特徴

ナイロンには多くの種類があります。

現在でも広く使用されているのが「ナイロン6」「ナイロン66」です。この代表的な2つのナイロンと「ナイロン12」を加えて、3つのナイロンの特徴をまとめました。

ナイロン6 (PA6)

  • n-ナイロン(開環重合)/ナイロン6:ε-カプロラクタム(炭素数6
  • 融点:225℃

ナイロン6は強度と耐熱性に優れていて、5大エンプラの一つです。

ポリアミド系の樹脂で最も使用されている材料で繊維素材として使用されるほか、熱可塑性のエンジニアプラスチックとして用いられます。

強靱で、耐摩耗性、潤滑性及び耐薬品性、耐油性に優れていて、ナイロン66に比べるとやや耐熱温度が低いですが、実用上大差はなく金属代替部品としての用途が多いです。

GF、CF、タルクなどの補強材・充填剤などを配合することにより、更に機械的性質に優れた物性になります。

■主な用途:自動車部品・電気・電子部品各種・ガソリンタンク・日用雑貨・建材・玩具・食品用フィルムなど

ナイロン66 (PA66)

  • n,m-ナイロン (縮合重合)/ナイロン66 :ヘキサメチレンジアミン(炭素数6+ アジピン酸(炭素数6
  • 融点:265℃

ナイロン66は、エンプラの中では特に強度に優れた素材で、各種物性のバランスが最も優れています。

ナイロン6よりも耐熱性、機械的強度に優れているので、ナイロン6よりも耐熱性あるいは機械的強度の必要とされる用途に使用されます。

またGF、CF、タルクなどの補強材・充填剤などを配合することにより、更に機械的性質に優れた物性にになります。

■主な用途:自動車部品・電気・電子部品各種・衣料用繊維など

ナイロン12 (PA12)

  • n-ナイロン(開環重合)/ナイロン12:ラウリルラクタム(炭素数12
  • 融点:176℃

ナイロン12は、ポリアミドの中では最も密度が低く、耐寒衝撃性、耐侯性にも優れています。寸法安定性に優れた素材で、特に低温での特性に優れている点が他のナイロンと大きな違いです。

ナイロン6、66に比べて吸水による寸法や機械強度の変化が少ないメリットがあります。

■主な用途:自動車用品(燃料チューブ・コネクター等)・電気電子部品・スポーツシューズ・電線被覆材料・結束バンドなど

ナイロン工業製品のおもな製造方法

ナイロンは他の樹脂と比べ、熱収縮性が高いのが特徴で寸法精度が比較的低くなってしまうのが現状です。
ナイロン製品を成形・造形するに当たっては、収縮率を計算して作る必要があり、職人さんの高い技術と経験が必要です。

量産品の場合

ナイロンの熱可塑性樹脂(加熱すると軟化する)の特徴を利用した代表的な製造方法です。

  • 射出成形:加熱して軟化したナイロン樹脂を金型に押し込み冷却し固めて成形
  • 押出成形:押出機で加熱・溶融した樹脂を製品の形状をした金型から押出して成形
  • ブロー成形:加熱した樹脂を型に入れ、樹脂の内側から空気を吹き込んで型の形状に成形

試作品や小ロットの場合

試作品でもロット量や用途、材料の種類によりますが、ナイロン製品の試作の場合は下記がおもな製法になります。

  • 射出成形
  • 切削加工(材料のブロックを切削して成形)
  • ナイロン真空注型(特殊工法)
  • 3Dプリンターによる造形

最近では小ロットの製品で、3Dプリンターを使用する選択肢も増えました。

3Dプリンターでのナイロン製品造形の主流は「ナイロン12」です。

ナイロン12が主流である理由は、ナイロンは熱収縮性が高く扱いにくいため、他のナイロンより融点(176℃)や吸湿性が低く、寸法安定性が高いという特徴から造形が比較的しやすいと考えられます。

弊社の3Dプリンターでは、高い技術が必要とされる「ナイロン6」での造形も可能で、高い強度や耐熱が必要な用途の製品を造形が可能です。
↓↓↓

ナイロン6+GF製品を3Dプリンターで!
粉末焼結方式「造形出力サービス」

粉末焼結方式では材料として樹脂系では主にナイロンが使用でき、靭性に優れたナイロン12ポリプロピレン、耐熱性に優れたナイロン12+GF(ガラスビーズ)が主要です。

弊社では、高機能粉末造形機を保持しており、耐熱性と高剛性に優れたナイロン6+GF(ガラスビーズ)での造形が可能で、実働試験に使用可能な部品も出力いたします。


ナイロンのまとめ

ナイロンは強度の高い非常に優れた材料で、衣料品から工業用品まで幅広い用途で使用されます。
工業品に至っては、その高強度と優れた耐熱性という特性から、金属の代替品としても使用されるほどです。

  • ナイロンとポリアミドの違い

一般的にはナイロンとポリアミドは同じことを指す。

「ポリアミド」の種類は多数あり、脂肪族骨格を含むポリアミドのことを「ナイロン」、芳香族骨格だけで構成されるポリアミドを「アラミド」と言う。

  • ナイロンの特性

耐熱性・靭性・耐油性・耐薬品性・機械的性質・耐衝撃性・摺動性・耐疲労性・耐摩耗性などに優れる

  • ナイロンの用途

自動車部品や電気部品などの工業製品の用途が多く、日用品などにも使用されます。

  • ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12の特徴

強靱で、耐摩耗性・潤滑性・耐薬品性・耐油性に優れる。ナイロン6はナイロン66に比べるとやや耐熱温度が低いが、実用上大差はなく金属代替部品としての用途が多い。ナイロン12は、密度が低く、耐寒衝撃性・耐侯性・寸法安定性に優れる。ナイロン6、66に比べて吸水による寸法や機械強度の変化が少ない。

  • ナイロン製品のおもな製造方法

■量産品の場合

  • 射出成形
  • 押出成形
  • ブロー成形

■小ロット、試作品の場合

  • 射出成形
  • 切削加工
  • ナイロン真空注型
  • 3Dプリンターによる造形

今回は、ナイロンの基礎知識でした。

「ナイロン製品を小ロットで製作したい!」「アイデアはあるけども素材や製法の選定がわからない」などがありましたら、弊社まで一度ご相談ください。

【 参考資料およびサイト 】

弊社では、特殊工法である熱可塑性樹脂の注型
(ナイロン注型)をはじめ、
用途に適した材料・製法をご提案いたします
自動車部品だけではなく、幅広い分野の製品を製作しております

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