プラスチックの反りを引き起こす「残留応力」とそれを緩和させる「アニール処理」とは?

プラスチックを加工するには、反りや変形、収縮は避けては通れないものです。

反りや変形の原因は、
プラスチック成型時に加えた外力に反発する「残留応力」によるものです。

プラスチック製品の加工において、その「残留応力」を緩和させ、寸法や形状を安定させるための処理のひとつに「アニール処理」というものがあります。

今回は、「残留応力」「アニール処理」について解説していきます。

残留応力とは

残留応力とは、

 「外力を除去した後でも物体内に存在する応力のこと」です。

一般的にプラスチック加工品は、降伏点を超える外力や熱が付加され成形されます。

その成形品を外力を取り除いても物体内で残る応力を「残留応力」といいます。

残留応力が発生するおもな理由

① 温度によるもの

樹脂は温度が高いと収縮力が強まります。

成形品は内部また肉厚部の方が温度が下がりにくいので、冷却時間差により収縮率が不均等になり残留応力を引き起こしてしまいます。

② 圧力によるもの

一般的に圧力が高いほど収縮率は小さくなります。

成型時の圧力は外側の方がより大きく、また肉厚が均等でない場合も圧力付加に差がでてしまうため、成形収縮や圧力の伝わりが箇所によって不均等になり残留応力が発生してしまいます。

強化繊維の配向によるもの

ガラス繊維などの強化繊維は、成型時の樹脂の流れの方向が繊維の向きになるため、繊維の配向に対して水平、垂直の向きで収縮率が異なります。そのため残留対応力が起きてしまいます。

これらの残留応力を緩和するためにアニール処理を施します。

アニール処理とは

アニール処理とは、

「材料や成形品に熱を加えることによって残留応力を取り除くこと」

プラスチックの種類に応じて加熱し、ゆっくり温度を下げることで応力を取り除きます。

結晶性樹脂のアニール方法

結晶性樹脂とは、規則正しい配列を持つ高分子のこと。

結晶性樹脂の分子イメージ

結晶性樹脂にアニール処理を行う場合、ガラス転移点(Tg)*よりも高い温度で加熱します。
結晶性樹脂内には結晶している部分としていない部分があり、加熱にすることによって結晶化を高め寸法安定性を向上させることができます。

< おもな結晶性樹脂 >

-ポリアミド(ナイロン)
-ポリエチレン(PE)
-ポリプロピレン(PP)
-ポリエチレンテレフタレート(PET)
-ポリアセタール(ポリオキシメチレン)(POM)など

*ガラス転移点とは

熱可塑性樹脂は、加熱していくと少しずつ粘度が上がりゴム状態になり(分子が動きやすい状態)、温度が融点以上になると液状になります。

逆に冷やすと固化状態(分子の運動が止まる状態)になります。

ゴム状態から固化状態になる境目の温度を「ガラス転移点」と言い、Tgと表記されます。

 

非晶性樹脂のアニール方法

非晶性樹脂とは、規則正しい配列(結晶部分)を持たない高分子のこと。

非晶性樹脂の分子イメージ

非結晶樹脂にアニール処理を行う場合、

ガラス転移点(Tg)よりも20~30℃低い温度
もしくは、荷重たわみ温度より5~10℃ほど低い温度

で加熱します。

加熱することにより、非晶分子は自由に動けるようになり残留応力が解放され、反り・変形を防げます。

< おもな非晶性樹脂 >

-ポリ塩化ビニル(PVC)
-ポリスチレン(PS)
-ポリカーボネート(PC)
-アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)
-ポリアミドイミド(PAI)など

ナイロン製品のアニール処理

2種類のアニール方法

ナイロン製品には、

  1. 加熱してアニールする方法
  2. 吸水(吸湿)をしてアニールする方法

の2種類あります。

①は、前途でご説明した通りの方法で「熱を加えて残留応力を外に逃がす方法」。
当社でも採用している方法です。

②は、吸湿性があり吸水することにより寸法安定・衝撃強度が向上する」というナイロンの特性を利用したアニール方法です。

実際の処理は成形品を熱湯の中に浸してプラスチックの分子の間に吸湿させる方法なのですが、

  • お湯の温度管理が難しい
  • 熱による変形も起こりやすい
  • 手間がかかる

などの問題点もあります。

そのような問題を解決してくれる「アニーリング装置」という水蒸気でアニール処理する専用装置もあります。

6ナイロン注型品のアニール

次は、具体的に弊社がどのように熱処理でナイロン6(PA6)製品のアニール処理しているかご紹介いたします。

6ナイロン注型品のアニール方法

ナイロン注型品を治具に固定して70~80℃の炉に入れ、2時間ほど経ったら取出して徐々に常温になるまで下げる。(3時間~1日)

「ナイロン」耐熱性・機械特性・耐薬品性など優れた特性を持つ高機能樹脂の一つで、結晶性樹脂です。

結晶性の構造を持つプラスチックのアニール処理は「ガラス転移点(Tg)」よりも高い温度の熱を加え結晶化度を高めます。そのことにより耐熱性・剛性が強化されます。

※6ナイロン(PA6)のガラス転移点は「50℃」、一般的に結晶性樹脂のアニール処理はガラス転移点より10~30℃ほど高い温度で加熱します。

熱可塑性であるナイロンは、その優れた特性により様々な用途に使用され汎用性が高い材料です。

ナイロンの種類は、

  • 11ナイロン(PA11)
  • 12ナイロン(PA12)
  • 6ナイロン(PA6)
  • 66ナイロン(PA66)
  • MCナイロン など

弊社が扱っているナイロンは6ナイロン(PA6)

□ 6ナイロンの特徴 □

高強度・高耐熱のため、軽量化として金属部品の代替として使用されることも多く、ガラス繊維を混ぜて耐熱性を高められます。
その反面、収縮率も高く反りも出やすくなります。

型をつくる段階から収縮率などを加味して製作し、注型後はアニール処理を施します

このようにしてナイロン注型品は作られます。

ナイロンの扱いは難しいため特に注意が必要になります。

今回は、プラスチック加工時の反り・歪みなどを引き起こす「残留応力」とそれを防止する「アニール処理」についての解説、そして扱いが難しいナイロン製品のアニール方法についてもお話しました。

樹脂はたくさんの種類があり、それぞれ特性も違います。それだけ扱い方も異なりますので、材料の勉強は欠かせませんね。

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