比重とは?比重と密度の違いや重量計算をおさらい【製品開発のためのプラスチック基礎】

前回のコラムでは、「樹脂化」のメリットや注意点を解説しました。

樹脂化による大きなメリットの一つは、やはり軽量化です。

材料によりますが、金属をプラスチックにすることで重量が半分以下になるのですから製品開発において材料置換を検討される方も多いと思います。

材料置換の材料選定の際に重要になるのが「比重」です。

比重について理解しているつもりだけど、密度との違いがわからなかったり、重量計算でつまづいてしまったりすることがありませんか。

製品開発の企画・設計・試作にするにあたり、比重や重量計算でつまずかないように
基礎知識として「比重」をもう一度おさらいしてましょう。

比重と密度は同じ?

比重と密度は同じものと勘違いしたり、混同される方が多いと思いますが、比重と密度は違うものです。

ここで分かりやすく違いを説明します。

比重と密度の定義

■比重

比重とは

ある物質の密度と、同体積の標準物質の密度との比

標準物質とは ※固体・液体の場合は「水」 ※気体の場合は「空気」

簡単に説明すると比重は、

【物質と【水の密度の比です。(※固体・液体の場合)

比重は物質の密度比のことですので、単位はありません

厳密にいうと、

■密度

密度とは

密度とは、一定の体積あたりの質量

ようは、ある一定の体積あたりの物質の重さ」が密度です。

ある体積にどのくらいの重さがあるかということなので、単位はあります

  • 固体・液体の場合は、「摂氏4℃の水」で、
  • 気体の場合は、「空気」です。

■比重と密度の違いとは

比重と密度の違い

密度は「単位体積あたりの質量」なのに対して、
  比重は「水との密度比」「水の質量の何倍か」を表しています。

※ 比重:(例)PPの比重:0.9(PPは水の重さの0.9倍)
 密度:(例)PPの1㎤あたりの密度:0.9g/㎤

1より小さい比重と大きい比重

水の比重は「1」ですので、

  • 「1」より小さい比重の物質は水に浮きます。
  • 「1」より大きい比重の物質は水に沈みます。

例えば、プラスチックのPP(ポリプロピレン)と金属の鉄の場合。

■PP(ポリプロピレン)の場合 / (比重:0.9

水の比重1に対し、比重が小さいので水に浮く。

■鉄の場合 / (比重:7.87

水の比重1に対し、比重が大きいので水に沈む。

◇ 液体・固体の場合は、水より比重が小さいものは水に浮き、水より大きい場合は水に沈みます

また 気体の場合は、空気より比重が小さいものは空気中に浮きます。ヘリウムガスの風船が空気に浮くのはヘリウムが空気より比重が小さいからです。

☆気体の場合、

空気の比重1に対し、

  • 比重が1より小さい気体は空気中で浮きます。
  • 比重が1より大きい気体は空気中で沈みます。

比重と密度の単位

比重は、物質の密度水の密度の比ですので、単位はありません

密度は、単位体積あたりの質量ですから単位はあります
(【g/㎤】、【kg/㎥】、【g/ml】、【kg/l】など)

単位体積ごとに表されますので、単位変換が必要になることもあります。

例えば、下記の「アルミ」と「ナイロン6」の場合、
1cm3の体積にどのくらいの質量(g)があるかを表しています。

単位を【g/㎤】を【kg/㎥】に変換したい場合、

単位換算

  • 1 g/cm3 =  1000 kg/m3
  • 1 kg/m3 =  0.001 g/cm3

1 ㎤ (立法センチメートル)の体積は  1 g ですので、 1 ㎥(立法メーター)の体積の質量は 1000000 g になります。
1000000 g をkgに変換すると ⇒  1000 kg になり、1000kg/㎥ となります。

(例)アルミの場合:2.71g/㎤ ⇒ 2,710kg/㎥

比重と密度の計算

先述したとおり、

密度は「単位体積あたりの質量」なのに対して、
  比重は「水との密度比」「水の質量の何倍か」を表しています。

水(摂氏4℃)の密度はほぼ1g/㎤のため、比重と密度は同じ数字になります。

(例)PPの1㎤あたりの密度:0.9g/㎤ ←単位あり
   PPの比重:0.9(PPは水の重さの0.9倍)←単位なし

■密度計算(※PPの場合)

(例)体積200㎤で質量180の物質(PP)

密度は、物質の(質量)を(体積)で割った値

180g(物質の質量)÷ 200㎤(体積) 0.9g/㎤(PPの密度)

PPの密度:0.9g/㎤

■比重値の計算(※PPの場合)

(例)PPの1㎤あたりの密度:0.9g/㎤

比重は、(物質の密度)を(水の密度)で割った数値

0.9(PPの密度)÷ 1(水の密度) 0.9(PPの比重)

PPの比重:0.9(PPは水の重さの0.9倍)

このように比重と密度は異なる意味ですが数は一致します。

重量を算出したいときは

比重や密度がわかれば、材料や製品の重量を簡単に算出できます。

■重量計算

質量 = 体積 × 密度(または比重)

こちらの角材の重量を材質別に算出してみます。
材料の比重よって重量は大きく変わります。

材質比重重量計算(体積x比重)重量
PP(ポリプロピレン)0.9H10cmxW15cmxL50cmx0.96,750g(6.75kg)
7.87H10cmxW15cmxL50cmx7.8759,025g(59.025kg)
アルミ2.7H10cmxW15cmxL50cmx0.920,250g(20.25kg)
PA6(ナイロン6)1.15H10cmxW15cmxL50cmx1.158,625g(8.625kg)

金属の鉄は約60kg、プラスチックのPPは6.75kg。
PPに比べ鉄は8倍以上の重さになります。

実際に重量計算してみると材質による重さの違いがわかりやすいですね。

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金属パーツからナイロン6へと材料置換した場合を検証してみました。

※こちらは、あくまでも検証用です。
アルミの比重は2.7、ナイロン6の比重は1.15ですが、ガラスフィラーを添加していますので比重も大きくなります。(ガラス比重:2.5)

まとめ

今回は、製品開発による材料選定で重要なポイントでもある「比重」や「密度」について解説しました。

■比重とは ⇒ 物質の密度と標準物質である水の密度(固体液体の場合)の比。
(物質の密度)を(水の密度)で割った数値。

■密度とは ⇒ 単位体積あたりの質量。
(物質の質量)を(体積)で割った数値。


材料選定では「比重」は重要なポイントですが、各材料の性質や特徴を知る必要があります。製品開発で重要なのは「適正な材料と製法の選択」です。

弊社は、35年以上多種多様な研究開発試作品を製作しており、特殊製法のナイロン注型、高性能の粉末造形、高精度・高品質の仕上がりの切削加工の技術で、数多くの部品・製品の納品実績のがあります。

製品開発による材料選定や製法選定でお悩みやご質問などございましたら、ぜひご相談ください。