【材料置換で軽量化】金属からプラスチックへ。樹脂化のメリットと注意すべきこと。
製品開発する上で軽量化は重要な要素です。
軽量化は自動車に限られたものではなく、構造物から日常で使用する容器やパッケージまで、分野を問わず環境に負荷をかけないための取り組みが必要となっています。
軽量化のおもな方法として、
- 材料置換
- 形状(構造)変更
- 薄肉化
などがあげられます。
その中でも、軽量化の代表的な方法である材料置換。
典型的なのが、金属材料をプラスチック材料に置き換える方法です。
近年ではプラスチック産業技術が進歩し、優れた高機能プラスチックが数多く開発されています。
そのため、従来では高い耐熱性や強度を必要とする部分には金属を採用していたものを高機能のプラスチックに代替するという「樹脂化」が進んでいます。
しかし、いままで金属を使っていたパーツをそのまま樹脂に材料置換するだけでは成立せず、樹脂の特徴を捉え応用して採用しなければいけません。
樹脂がもつ特性を活かして品質・性能・コストのバランスを踏まえた製品開発が必要となります。
本記事では、特殊製法のナイロン注型、高性能の粉末造形、高精度・高品質の仕上がりの切削加工の技術で、数多くの部品・製品の樹脂化実績のある弊社が、樹脂化をする上でのメリットや注意点などを解説していきます。
樹脂化のメリット6つ。
機能性に優れた樹脂素材の開発が進み、産業用品から日用品までさまざまな分野で樹脂化が広がっています。
ここでは、樹脂化するメリットをご紹介します。樹脂の素材特性を活かしてプラスチックに代替することで下記のメリットが得られます。
メリット①:軽量化
金属材とプラスチック材の明らかな違いは重量。
軽量化のために樹脂化を検討するというケースが多いのではないでしょうか。
下記は、代表的な材料の比重一覧です。
金属に比べると樹脂の方が大幅に比重値が小さいのがわかります。
場合によっては、金属から樹脂に変更することで重量が1/4以下にすることが可能です。
■おもな金属と樹脂の比重例
金属
金 属 | 比重(g/㎤) |
---|---|
鉄(SS400) | 7.8 |
鋳鉄 | 7.2 |
ステンレス(SUS304) | 7.9 |
アルミ | 2.7 |
マグネシウム合金 | 1.8 |
チタン | 4.5 |
真鍮 | 8.4 |
金 | 19.3 |
銀 | 10.5 |
銅 | 8.96 |
汎用プラスチック
汎用プラスチック | 比重(g/㎤) | フィラー添加時の比重 |
---|---|---|
PP(ポリプロプレン) | 0.9-0.91 | 1.22-1.23(GF40%) |
PE(ポリエチレン) | 0.91-0.96 | |
ABS | 1.01-1.02 | 1.36(GF40%) |
アクリル | 1.17-1.20 | 1.17-1.20 |
エンジニアプラスチック
エンジニアプラスチック | 比重(g/㎤) | フィラー添加時の比重 |
---|---|---|
ポリカーボネート | 1.2 | 1.40-1.43(GF30%) |
ナイロン6 | 1.12-1.15 | 1.35-1.42(GF30-35%) |
ナイロン66 | 1.13-1.15 | 1.38(GF30%) |
POM(ポリアセタール) | 1.42 | 1.54-1.56(GF30%) |
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メリット②:コスト削減・加工時間の短縮
材料にもよりますが、樹脂は金属に比べ低価格です。
また加工性に優れており、形状によっては複数部品の組み合わせのパーツを樹脂で一体化して製作するなど、複雑形状成形をより簡易化することもできるので、加工費・加工時間が削減されます。
そのうえ軽量なので、輸送費の減少にもつながります。
メリット③:省エネ化
石油や石炭、天然ガスなどのエネルギー資源には限りがあります。軽量化することでエネルギーの消費も少なくなり、省エネにつながります。
少ないエネルギーで効率よく稼働させることも環境への大きな取り組みになります。
メリット④:防錆性・耐薬品性
一般的に金属は酸化しやすく錆びやすい、また酸やアルカリに弱い傾向があります。いっぽう樹脂は防錆に優れ、耐薬品性の良い樹脂も多くあります。樹脂化することでサビや薬品による劣化を防ぐことが可能になります。
メリット⑤:着色性・透明化
樹脂の場合、材料に顔料や染料を加えて着色が可能な素材も数多くあります。また透明の素材もあり可視化して内部の構造をチェックすることもできます。
メリット⑥:絶縁性
プラスチックは電気を通しにくい性質があります。逆に金属は導電性を持ち電気伝導を生じやすい性質です。絶縁性を必要とする部品には適しています。
押さえておこう!樹脂化で注意すべきこと3つ
軽量で高機能なプラスチックが多く開発されている中、樹脂化は効率のいい軽量化の手段の一つですが、プラスチックの持つ特性によるデメリットもあります。
樹脂化のメリットをお伝えしましたが、デメリットとなることもあります。金属と樹脂は特性が異なります。樹脂化にあたり注意しておくべきことを押さえておきましょう。
注意点①:コストアップしてしまう場合もある
樹脂化のメリットのひとつに「コスト低減」と挙げましたが、プラスチックの種類によって金属よりコストが増加してしまうこともあります。
特にエンジニアプラスチックやスーパーエンジニアプラスチックなどの高機能プラスチックは、機能が高くなるほど高価になり、加工にも専門性が必要なります。
必ずしも「樹脂化=コストダウン」にはならないということも押さえておきましょう。
注意点②:充填剤の比重も考慮
エンプラやスーパーエンプラのほとんどは、フィラーやビーズなどの充填剤で様々な機能を付加して強化させています。
その充填剤によって比重も増加しますので、フィラーの種類や量も考慮するようにしてください。
注意点③:精度は金属より劣る
樹脂素材は寸法安定性が低く、精度は金属より劣ります。
また温度や湿気により影響を受けやすく、膨張、収縮、反りやねじれが起こる場合があり、温度・湿度管理が必要になりこともあります。
樹脂の種類によっては、成形前または後に変形防止処置や変形緩和加工が必要となります。
↓↓↓変形緩和加工「アニール処理」について詳しくはこちらの記事をどうぞ
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既存の金属部品からの樹脂化には試作が必須
樹脂化には大きなメリットがある一方、プラスチックのもつ特性によって注意しなければいけない点もあります。
メリット
- 軽量化
- コスト削減・加工時間の短縮
- 省エネ化
- 防錆性・耐薬品性
- 着色性・透明化
- 絶縁性
樹脂化するには樹脂の特徴や特性の知識が必要になりますので、製作にあたり樹脂を得意とするメーカーに相談することをお勧めします。
弊社は35年以上、多種多様なプラスチックの研究開発試作品を製作しております。
中でも機能性・多様性に優れたエンジニアプラスチックであるナイロンの試作を得意としており、特殊工法のナイロン注型をはじめ粉末造形、切削加工にて樹脂化を図りたいメーカー様との強い信頼関係を築いております。
樹脂化のご検討やご相談などありましたら、ぜひお問い合わせください。
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