【わかりやすく解説】 真空注型とは?│樹脂製品開発のための必須知識

真空注型とは?

今回は、樹脂製品開発のための必要知識として、
押さえておくべき製法の一つ「真空注型(読み方:しんくうちゅうけい)」をご紹介します。

樹脂製品の試作工法は数多くあり、適切な製法を選定するにはある程度の経験が必要で、
試作品製作を進めるにあたり知識があれば工程がよりスムーズに進みます。

試作品製作の流れ
  • 試作開発は、スピードが勝負!

開発期間があらかじめ決められているので、工程途中でやり直しなどが出れば
再度、設計の見直し・試作品も作り直すなど、緊急の対応が必要になることもあります。

より早く、より安く要望に応じた試作品が仕上がるように
信用できる試作メーカーさんや加工業者さんに発注する知識を持つことが重要となります。

正しく理解することは、無駄なコストや費用を抑えることにもつながります。

今回は試作製法のひとつ真空注型に関して、知っているようで知らないこともあるかもしれませんので解説いたします。

最低限、下記の要素を踏まえて製法選定をしてみましょう。

  • 生産量
  • コスト&納期
  • 材料
  • 製品形状
  • 各製法のメリット&デメリット

注型ってどんな工法?

真空注型(しんくうちゅうけい)とは

マスターモデルをもとにシリコーンゴムで型を作成し、
真空状態の中で硬化する注型用樹脂を注いで、複製品を製作する技術

真空注型のシリコーン型
注型で使用するシリコーン型

簡単に説明すると、

真空の状態で「型に液体状の樹脂を流して固める」製法です。

射出成形では金型を使うのですが、注型ではシリコーンゴムの型を使用します。
そのため、

  • 金型(射出成型)よりも型が安く作れる。
  • 金型と比べ、コスト減少&納期短縮できる。

という特徴があります。

5~20個までの小ロットの試作づくりには最適な製法です

それでは、注型ではどのような工程で製作するかをご説明します。

真空注型の製造プロセス

シリコーン型製作

3Dデータをもとに光造形や切削でマスターモデルの作成後、マスターモデルを使ってシリコーン型を製作します。

真空注型のシリコーン型製作①
型枠の中にマスターモデルをセットし、シリコンを流し固める。
真空注型のシリコーン型製作②
シリコーンが硬化したら、型枠を外し、シリコーン型をパーティングラインに沿って切開する。
工程
1

【工程1.】シリコーン型製作

イラストでの説明

真空注型シリコーン型作り方
光造形等を使用してマスターモデルを作成しゲート*を取り付けます。 *樹脂注入口
真空注型シリコーン型作り方
マスターモデルをセットしてシリコーンを流し型枠を作成します。
真空脱泡させ硬化させます。
真空注型シリコーン型作り方
硬化したシリコーンゴム型を切開してマスターモデルを取り出します。

【工程2.】注型品製作

工程1で製作したシリコーン型を使用し、真空内で注型用樹脂を型に流して製品を作っていきます。

注型品製作

工程
1

注型品製作

工程1で製作したシリコーン型を使用し、真空内で注型用樹脂を型に流して製品を作っていきます。

真空注型 材料注入
真空状態の注型槽の中に型締めしたシリコーンを設置し、材料を注入。
真空注型 脱型
注入した材料が硬化したら型から取り出す

工程
2

イラストでの説明

1.

  • シリコーン型を合わせ型締め
ナイロン注型プロセス2

2.

  • 真空の状況下で材料を攪拌
ナイロン注型プロセス3

3.

  • シリコーン型に材料を注入
ナイロン注型プロセス4

4.

  • 注型品の取出し(脱型)

↓↓↓ 動画にて注型プロセスをご覧いただけます ↓↓↓

真空注型の使用材料

一般的な注型用の材料は、ウレタン系やエポキシ系の二液硬化性(硬化させるため硬化剤を混合する)の熱硬化性樹脂に限られます。

  • 熱硬化性樹脂」とは ⇒熱を加えると硬化する樹脂
  • 熱可塑性樹脂とは ⇒熱を加えると軟化する樹脂

量産工法である射出成形で使用するのは主に熱可塑性樹脂。注型と量産の素材の物性が異なってしまうのがデメリットですが、

弊社では、特殊工法「ナイロン注型」という技術で、熱可塑性樹脂である6ナイロンの真空注型が可能です。そのことにより、実用試験でも使用可能な製品も製造可能です

真空注型 使用材料

真空注型の用途

では、一般的に注型品はどのような用途に使用されるのでしょうか。


1型で20個ほどの注型ですので試作品での用途がほとんどですが、小ロットの最終製品として使用される場合もあります。

デザイン変更など、何度も試作品を作り直す可能性がある場合も金型を何回も作り直すよりも、シリコン型を作り直した方がコストが抑えられます。

【 おもな用途 】

  • 機能チェック・形状・色確認用の試作品
  • 商用・営業用サンプル品
  • 金型検討用

真空注型のメリット・デメリット

真空注型の主なメリット・デメリット

< メリット >

  • 小ロット製作に最適 (1型あたりのロット数:1~20個)
  • 金型に比べ安価で製作が可能
  • シリコーン型の為、多少のアンダー形状も無理抜き可能

デメリット >

  • 20個以上だとで増型が必要(製品の形状による)
  • 切削品や射出成型品に比べ、精度がやや劣る
  • 材質が、ウレタン系とエポキシ系に限定される*一般的なデメリット
    ⇒二幸技研は6ナイロンが使用可能です!

生産数量による、切削加工・真空注型・射出成形の比較

生産数量別に適した製法(形状や使用用途、材料によって該当しないこともあります)

切削加工(CNC)

適した数量:1~3個
特   徴:マシニングセンターと呼ばれる切削装置でブロックを削り出して作る方法。
コスト・納期:1つひとつ削り出すのでコストが高くなる。少量向け
材   料:量産品と同等の材料が使用可能
デメリット:高い精度が出せるが、数量が多ければ多いほどコストがかかってしまう。
切削加工イメージ
切削加工イメージ

真空注型

適した数量:4~20個
特   徴:マスターモデルから作ったシリコーン型を使用し、樹脂を流して硬化させる製法。
コスト・納期:金型を作るより、コスト・納期とも抑えられます。
材   料:ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂が一般的。※弊社では6ナイロンも使用可
デメリット:切削や射出成形よりも精度がやや劣る

真空注型のわかりやすい動画です。(※Vacuum Casting:真空注型)※自動翻訳で日本語に設定すると日本語の字幕が表示されます

射出成型(簡易型)

適した数量:20個以上
特   徴:金型を使用して量産する方法。
コスト・納期:金型を作るコストと時間がかかるが、生産量が多い場合は1個あたりの単価が安くなる。
材   料:熱可塑性と呼ばれるほとんど全てのプラスチック素材を使うことが可能。
また熱硬化性と呼ばれるプラスチック素材でも、使えるものが多くある
デメリット:イニシャルコストと時間がかかってしまう

射出成型のわかりやすい動画です。(※Injection Molding:射出成型)※自動翻訳で日本語に設定すると日本語の字幕が表示されます

特殊技術「ナイロン真空注型」出現で、注型の用途が大幅にアップ

今まで、「真空注型」というと、使用できる素材が限られ耐熱品が作れないというデメリットがありました。

耐熱性・耐久性が必要な小ロットの試作品では、「切削加工」「射出成型」での製作が主流でした。

  • 金型製作はその費用が高額になり、デザイン変更への対応が利きません。
  • ナイロン材の切削も、1個あたりの単価が高く、費用がかさんでしまうことが難点でした。

弊社保有の画期的な技術「ナイロン真空注型」の出現で、
耐久・耐熱部品 1~20個の小ロット試作品が真空注型で可能になりました!

これまでに数多くの実用試験に使用されるナイロン注型品を製作しております。

ナイロン注型 サンプル品
※量産品を注型して製作したマフラープロテクターのサンプル品 

ナイロン注型品納品例)
マフラーカバー、インテイクマニフォールド、エンジンカバー、ハウジング 等

真空注型のまとめ

真空注型とは
「真空状態の中で液体樹脂をシリコーン型に流し、硬化させて製品を作る製法」

  • コスト:射出成型用の金型を作るより安価。
  • 納 期:射出成型よりも短い。
  • ロット数5~20個の製品に適する。
    ※生産量 5個以下の場合:切削加工
    ※生産量20個以上の場合:射出成型(金型)
  • 使用材料:
    【一般的な真空注型】

     ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコン系樹脂
    【二幸技研の真空注型】
     ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコン系樹脂、6ナイロン(ガラス添加可能)

今回は「真空注型」について解説しました。

ここで解説した内容はすでにご存じの方もいるかと思われますが、以前より知識が増えたという方がいらっしゃれば幸いです。

「試作を考えているが、どの製法がいいのかわからない」「試作製作について質問したい。」等あれば、弊社までお問い合わせください。

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