CNC加工機を使うメリット5選!種類や導入前にやるべきことも解説

部品の品質向上と生産体制の最適化を図るため、CNC加工機を活用する企業が増えています。しかし「CNC加工機ってどんな種類があるの?」「導入したいけど何から始めればいいかわからない」と悩んでいる方も多いでしょう。
そこで、この記事ではCNC加工機を導入するメリット5選を紹介します。CNC加工機の種類や導入前にやるべきことも解説するので、導入を検討している方は最後までご覧ください。
CNC加工とは

CNC加工とは、コンピュータによる数値制御(Computer Numerical Control)を用いて工作機械を操作し、素材を削ったり穴を開けたりする加工方法のことです。従来の手動操作とは異なり、あらかじめ設定されたプログラムに基づいて機械が自動で動作するため、高精度かつ効率的な加工が可能です。
また、CNC加工は金属や樹脂などの多様な素材に対応しているため、重工業から精密機器まで、さまざまな分野で利用されています。特に、自動車部品や航空機部品、医療機器など、高い精度が求められる製品の製造には欠かせない技術となっています。
CNC加工機の種類

CNC加工機は、用途や加工方法に応じていくつかの種類に分かれています。
- 穴あけ加工|CNCボール盤
- フライス加工|CNCフライス盤
- 旋削加工|CNC旋盤
- 複合加工|マシニングセンタ
穴あけ加工|CNCボール盤
CNCボール盤は、材料に正確な穴を開けるための工作機械です。手動のボール盤とは異なり、コンピュータによって制御されるため、穴の位置や深さをプログラム通りに高精度で加工できます。
さらに、ドリルの回転数や送り速度なども数値で設定できるため、アルミ・鉄・樹脂といった素材に応じて、最適な条件での加工が可能です。このような高精度な制御により、ネジ穴の位置ずれが許されない製品や、基板のように多数の穴を均等に配置する必要がある部品の製造において、CNCボール盤は不可欠な存在となっています。
また、構造が比較的シンプルであるため、設備コストを抑えつつ、穴あけ作業の自動化を実現したい現場にも適しています。
フライス加工|CNCフライス盤
CNCフライス盤は、回転する刃物で素材を削り、平面や溝を作る工作機械です。主にXYZの3軸、または回転軸を含めた5軸で制御され、コンピュータにより複雑な形状も自動で加工できるのが特徴です。
従来の手動フライス盤では難しかった、滑らかな曲面の加工や複雑なポケットの成形なども、CNC制御によって正確に実現できます。機械装置の筐体部品やヒンジ取付部のように「見た目の仕上がり」「他部品との組み付け精度」などが重視されるパーツでは、CNCフライス盤による精密な加工能力が欠かせません。
旋削加工|CNC旋盤
CNC旋盤は、回転する材料を刃物で削り取ることで、円筒形状を高精度に加工する工作機械です。素材を主軸で回転させ、固定されたバイト(切削工具)を送り動作させることで、外径・内径・端面などを正確に仕上げられます。
具体的には、自動車のシャフトやベアリングの外輪、金属製のパイプなど、軸対称の形状を持つ部品の製造に広く使用されています。こうした部品はわずかな同心度のズレや面粗さの違いが製品の性能に直結するため、高精度な制御が可能なCNC旋盤が不可欠です。
さらに、CNC旋盤では外径加工だけでなく、内径加工(穴の中を削る)やテーパー加工(斜めの面)なども正確に行えます。
複合加工|マシニングセンタ
マシニングセンタとは、穴あけやフライス加工など、複数の加工工程を1台でこなせる高機能なCNC工作機械です。従来はそれぞれの加工を別々の機械で行っていたため、作業ごとに機械の設定を変えたり、素材を取り外して再び固定したりする必要がありました。
しかし、マシニングセンタでは最初に素材をセットするだけで、複数の加工を連続して自動で行えるため、作業の効率化と操作ミスの防止につながります。さらに、素材を何度も付け直す必要がないため、加工位置のズレが起きにくく、寸法精度の安定にも寄与します。
切削加工について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
関連記事:【機械加工】切削加工を基礎から学ぶ!工作機械の種類と加工方法
CNC加工機を導入するメリット5選

CNC加工機を導入するメリットは、主に以下の5つです。
- 高品質な部品を製造できる
- 複雑な形状に対応できる
- 夜間や休日も稼働できる
- 納期管理がしやすくなる
- 事故を未然に防げる
高品質な部品を製造できる
従来の加工では、熟練した職人の経験や勘に頼る部分が多く、仕上がりにばらつきが生じていました。しかし、CNC加工ではあらかじめ作成されたプログラムに基づいて機械が動作するため、誰が操作しても一定の品質が保たれます。
このような安定した加工精度は、寸法のズレが許されない精密部品や、複数の部品を組み合わせる製品の加工において特に重要です。また、細かな寸法調整が必要な仕上げや、表面にムラのない美しさが求められる製品でも、CNC加工なら安定した品質を実現できます。
これにより、検査工程での不良率低下や品質に関するクレーム削減につながり、企業の信頼性向上にも貢献します。
複雑な形状に対応できる
曲線を多く含む形状や複数の面にまたがる加工、深い溝や細い穴のような繊細な加工は、従来の手作業では高度な技術と多くの工数が必要でした。特に、自動車のボディの曲面や医療機器のような微細で複雑な部品は、手作業では寸法や形状のばらつきが生じやすく、安定した品質を保つのが難しいとされてきました。
しかし、CNC加工では工具の動き・送り速度・切削深さなどをミクロン単位で制御できるため、複雑な形状も高精度に加工できます。
夜間や休日も稼働できる
手動による加工では作業時間が限られますが、CNC加工機を使えば交代勤務や深夜作業を組まずに、24時間自動で稼働させることが可能です。たとえば、就業時間内に加工の準備を済ませておけば、定時後から夜間にかけて無人で加工を進め、翌朝には完成品を受け取るといった運用も実現できます。
このような無人運転によって、作業者の負担を増やすことなく生産効率を高められるため、慢性的な人手不足の対策にもなります。さらに、夜勤や長時間労働の負担が軽減されることで、従業員の定着率向上にもつながります。
納期管理がしやすくなる
手作業では、作業者の熟練度やその日の体調、作業環境によって加工にかかる時間にばらつきが生じがちです。しかし、CNC加工ではプログラム通りに工程が進むため、加工時間のブレが少なく、作業にかかる時間を正確に把握できます。
「この部品は1時間で1個作れる」と明確に分かっていれば、注文数に応じて必要な時間を逆算し、納期に合わせた生産計画を立てやすくなります。こうした計画の精度が高まることで、スケジュール通りの生産が可能になり、営業部門や購買部門との連携もよりスムーズに行えるようになります。
事故を未然に防げる
手作業で機械を操作する場合、刃物への接触や素材の飛散など、作業中の事故リスクが伴います。一方、CNC加工では機械が自動で動作するため、人が直接刃物に触れる機会がほとんどありません。
たとえば、加工中の素材を無理に押さえてケガをしたり、切りくずで指を切ったりするような事故は、機械内で加工が完結するCNC加工ではほぼ発生しません。さらに、多くの機種では加工エリアがカバーで囲まれ、安全センサーが異常を検知すると自動停止する設計となっています。
こうした安全対策の向上により、作業者の精神的な負担が軽減され、安心して作業に取り組める環境が整います。
CNC加工の流れ

導入後のトラブルを防ぐためにも、CNC加工の手順を事前に確認しておきましょう。
- CADソフトで図面を作成する
- CAMソフトでプログラムを作成する
- CNC加工機に工具・材料を取り付ける
- CNC加工機を動作させる
- 品質チェックを行う
- 仕上げ作業を行う
CADソフトで図面を作成する
CAD(Computer Aided Design)とは、コンピュータを使って製品の設計図を作成する技術です。製造現場では、CADソフトによって必要な図面やデータが作成されます。
CADソフトには2次元用と3次元用があり、用途や目的に応じて使い分けられます。設計段階でミスがあると後工程にまで影響するため、図面が完成した後は寸法や形状を入念にチェックすることが大切です。
CAMソフトでプログラムを作成する
CADソフトで作成した図面データをもとに、CAMソフトを使ってCNC加工機を制御するためのプログラムを作成します。CAM(Computer Aided Manufacturing)は「コンピュータによる製造支援」を意味し、使用工具・加工順序・切削順序といった条件を具体的に指示します。
この工程では、加工条件を最適に設定することが重要です。条件が合っていないと、工具の破損や機械の異常停止といったトラブルにつながる恐れがあります。
最終的に生成されたプログラムはNCコード(Gコード)に変換され、CNC加工機へ送信されます。
CNC加工機に工具・材料を取り付ける
プログラムが完成したら、CNC加工機で使用する工具と材料を適切にセットします。まず、使用する工具(エンドミルやバイトなど)を選定し、それぞれの機械にしっかりと固定します。
その後、材料をCNC加工機のテーブルまたはチャックに固定します。工具や材料の取り付けが不十分な場合、加工中にブレや脱落が発生し、製品の精度を損なうだけでなく、事故の原因にもなりかねません。
そのため、加工中にズレないように、治具や専用の固定具を使って確実に固定することが大切です。
CNC加工機を動作させる
工具や材料の準備が整ったら、CNC加工機を実際に動かして加工を開始します。まず、原点合わせや工具長補正(正しい加工位置を出すための調整)を行いましょう。
次に、工具や材料の取り付け状態を再確認し、安全と精度が確保されていることをチェックしてから加工を開始します。加工中は機械の動作を監視し、異常音や激しい振動があればすぐに停止して原因を確認します。
品質チェックを行う
CNC加工が完了したら、完成した部品が設計通りに仕上がっているかを確認しましょう。まず、目視検査で傷や欠けといった外観不良がないかをチェックします。
その後、ノギスやマイクロメータなどを使って寸法測定を行い、寸法公差内に収まっているかを確認することが一般的です。精度が求められる部品には、三次元測定機(CMM)といった精密測定装置を使用することもあります。
仕上げ作業を行う
品質チェックで問題がなければ、仕上げ工程に進みます。ここではバリ取りや表面の仕上げ、洗浄などの作業が行われます。
これらは見た目を整えるだけでなく、組み立ての不具合防止や安全性の確保といった機能面にも関わる重要な作業です。こうした仕上げが終わると、必要に応じて塗装や表面処理が施され、最後に梱包されて出荷準備に入ります。
CNC加工機を導入する前にやるべきこと

はじめてCNC加工機を導入する場合は、次の3点をチェックしてみてください。
- 切削加工が適切かを検討する
- 現行ラインとの兼ね合いを確認する
- CNC加工の専門家に相談する
切削加工が適切かを検討する
CNC加工機を導入する前に、自社の製品や加工内容に切削加工が適しているかを慎重に検討する必要があります。CNC加工機は高精度な切削加工が可能ですが、すべての製品や部品に最適とは限りません。
たとえば、形状や生産量によっては、プレス加工や射出成形といった他の製造方法の方が効率的でコストを抑えられる場合もあります。さらに、CNC加工機は初期投資だけでなく、工具代やメンテナンス費用、作業者の教育コストなども発生します。
そのため、費用対効果をよく見極めたうえで、自社の製造体制にとってCNC加工が最適かどうかを冷静に判断することが大切です。樹脂製品の加工を考えている方は、こちらの記事もご覧ください。
関連記事:【わかりやすく解説】 真空注型とは?│樹脂製品開発のための必須知識
現行ラインとの兼ね合いを確認する
高性能なCNC加工機を導入しても、現場にうまく組み込まなければ、かえって作業効率を落とす恐れがあります。具体的には、既存の工程と段取りが噛み合わず作業が滞ったり、騒音や切粉の排出が周囲の作業環境に悪影響を与えたりするケースも少なくありません。
こうした問題を避けるためにも、導入前に現場のレイアウトや作業手順をあらかじめシミュレーションし、新しい設備が無理なく組み込めるかを確認しておきましょう。
CNC加工の専門家に相談する
CNC加工機の導入には適切な設備の選定に加えて、加工条件の設定やプログラム作成など、さまざまな知識とスキルが求められます。特に初めて導入する場合は、必要な情報を自力で集めながら、機器や条件を適切に判断・設定するのは容易ではありません。
そのため、早い段階でCNC加工の専門家に相談するのがおすすめです。製品に適した加工機の種類や現場に適した設置方法など、専門的な視点からアドバイスを受けることで、導入後のトラブルや無駄な出費を防げます。
また、CNC加工機の導入に不安がある場合は、外注も検討してみましょう。CNC加工機は高額な設備であるうえ、工具・周辺機器・教育・立ち上げなどにも費用がかかります。外注であれば、こうした初期投資を抑えつつ、製品開発や試作品づくりを進めることが可能です。
弊社ではCNC加工のほか、ナイロン注型・粉末造形などの多様な技術を活かした試作品製造に対応しています。形状や素材に応じて最適な加工手法をご提案いたしますので、外注をご検討中の方は「お問い合わせフォーム」よりお気軽にご相談ください。
まとめ
この記事では、CNC加工機の種類や導入するメリット、運用前にやるべきことについて解説しました。CNC加工機を活用することで、複雑な形状も安定して加工できるようになります。
また、夜間や休日の稼働も可能になり、納期の管理がしやすくなります。そのため、生産効率や加工精度を向上させたい方は、この記事を参考にしながらCNC加工機を導入してみてください。
もし「導入コストが高い」「ノウハウがない」といった理由で導入に踏み切れない場合は、外注も検討してみてください。弊社ではマシニングセンタやNCフライス盤などの最新機器を活用し、プラスチック製の試作品を製造しています。
穴径の変更や穴の追加といった、量産立ち上げ時によくある仕様変更にも対応しているため、初めて外注する方でも安心してご依頼いただけます。オンラインでデータ共有しながら打ち合わせが可能ですので、ご興味がある方は「お問い合わせフォーム」よりご連絡ください。