設計ミスを防止する方法5選!起こりやすい問題や発生時の対処法も解説

設計ミスを防止するためには、現場の仕組みづくりを日々見直すことが大切です。しかし「なかなかミスが減らない」「確認体制を整えられない」と悩んでいる方も多いでしょう。
そこで、この記事では設計ミスを防止する方法5選を解説します。起こりやすい問題や発生時の対処法も紹介するので、設計に関わる方は最後までご覧ください。
代表的な設計ミス

現場で見落としがちな設計ミスは、主に次の7つです。
- 荷重やトルクに対する強度が不足している
- 材料特性が仕様を満たしていない
- 使用環境での温度変化を考慮していない
- 摩擦による効率低下や発熱を想定していない
- 工具が干渉して組み立てできない
- 調達困難な部品を採用している
- 加工条件が設備の上限を超えている
荷重やトルクに対する強度が不足している
製品には静的な重さだけでなく、動作中の加速度や衝撃、ねじりなどが複雑に組み合わさって発生します。こうした要素を十分に見積もらないまま設計を進めると、部品が変形したり、耐久性が低下したりする恐れがあります。
特に荷重の方向や分布を単純化しすぎると、使用時に想定外の応力集中が起こり、破断することも少なくありません。さらに、トルクを伝える軸やボルトのように回転力を扱う箇所では、力の流れを十分に考慮しないと、設計時の想定と実際の力の伝達に差が生じることがあります。
材料特性が仕様を満たしていない
設計図面上では問題がなく見えても、使用する材料の特性が仕様に合っていないと、思わぬトラブルを招くことがあります。たとえば、引張強さや弾性率といった基本的な性能が不足していると、設計通りの機能を発揮できません。
樹脂や金属などの材料は、ロット差や加工条件によって特性が微妙に変化することがあり、カタログ値をそのまま信頼すると実際の特性と異なる場合があります。さらに、異なる素材を組み合わせる場合は、化学反応や異種金属による腐食(電食)といった相互作用にも注意が必要です。
こうした不一致を見落とすと、製品の変形や品質不良につながる恐れがあります。
使用環境での温度変化を考慮していない
多くの材料は温度によって膨張や収縮を起こし、その差がわずかでも長期間の使用でゆがみや亀裂の原因になります。特に金属と樹脂のように異なる素材を組み合わせた構造では、温度差によって応力が集中し、接合部が緩む、または剥離するといった不具合が発生しやすくなります。
また、電子機器では発熱による内部温度の上昇も無視できません。冷却設計が不十分だと、基板や部品の性能低下を招き、誤作動や寿命の短縮につながることがあります。
屋外で使用される製品では昼夜や季節の温度差、直射日光などの影響も加わるため、設計時に想定した範囲を超える温度変化にも対応できるよう、安全性を確保する必要があります。
摩擦による効率低下や発熱を想定していない
部品同士が接触して動く以上、摩擦の発生は避けられません。こうした摩擦抵抗は動力伝達の効率を下げ、設計上の性能を損なう原因になります。
たとえば、可動部に摩擦の大きい材質を用いると、必要なトルクが増加し、結果として駆動系全体に過負荷が生じるおそれがあります。さらに、摩擦で生じた熱がこもると、潤滑油の劣化や材料の軟化が進み、最終的には部品の変形や固着に至ることもあるでしょう。
また、長期使用による摩耗を考慮しないと、精度の低下や異音の発生といった問題が起こりやすくなります。これらの現象は静止状態では現れにくいため、実際の使用条件を想定した評価を行うことが重要です。
工具が干渉して組み立てできない
理論上は問題がないように見えても、工具が部品や周囲の構造に干渉し、組み立て作業が進まないことがあります。特に、狭い場所でボルトを締めたりコネクタを差し込んだりする工程では、工具の動く範囲や作業者の手の入り方まで考慮することが重要です。
これを見落とすと、現場で組み立てが止まり、設計変更や治具の追加が必要になる場合もあります。さらに、無理な姿勢での作業や狭い角度での締め付けは、作業者の疲労を増やし、ミスや品質のばらつきを招きやすくなります。
調達困難な部品を採用している
設計時には性能やコストを優先するあまり、入手が難しい部品を選んでしまうことがあります。こうした部品は試作段階では問題なくても、量産や長期供給の段階で大きなリスクになります。
たとえば、特定メーカーしか製造していない特殊な規格品や、生産が終了している旧型部品を使用すると、急な調達遅延や価格高騰に直面しかねません。また、海外製品の場合は輸送期間や在庫状況の変動も大きく、供給が安定しないこともあります。
代替部品を検討していなければ、供給が途絶えた際に仕様変更や再設計が必要になり、製品全体の完成度が下がる恐れもあります。
加工条件が設備の上限を超えている
設計段階で設定した加工条件が、実際の設備能力を超えているケースは少なくありません。たとえば、深穴加工では切りくずの排出が難しく、工具が振動や熱によってたわむため、寸法精度のばらつきや表面の荒れが発生します。
薄肉形状では加工中に素材が変形しやすく、狙い通りの形状を維持するのは容易ではありません。こうした条件を考慮せずに設計すると、仕上がり精度の低下だけでなく、工具の摩耗や工程の複雑化によるコスト増加にもつながります。
設計ミスによる主なトラブル

設計ミスを見落とすと、以下のようなトラブルにつながります。
- 納期が遅延する
- リコールが発生する
- 事故が発生する
納期が遅延する
設計ミスは一見すると小さな修正で済むように見えても、実際には納期全体に大きな影響を与えることがあります。特に、試作後に不具合が判明したときは設計変更に加え、工程表の修正や再加工の手配など、さまざまな作業をやり直さなければなりません。
こうした対応は複数部門が関わるため、全体のスケジュールが遅れ、他案件や生産ラインの計画にも影響することがあります。さらに、外注品や調達部品が関係する場合は、再発注や納期再調整が発生し、社外との調整にも時間を要します。
リコールが発生する
設計ミスによって製品の安全性や性能に支障が生じると、使用者の手元で不具合が起きるため、企業は対象製品の回収や修理、交換を行わなければなりません。リコールが発生すると、多大な費用と労力を要するだけでなく、ブランドイメージの低下や顧客の信頼喪失にもつながります。
特に、設計上の欠陥が複数の製品ラインに共通している場合は、影響範囲が広がり、事業全体への波及も避けられません。そのうえ、外部から設計ミスを指摘された際に対応が遅れたり説明が不十分だったりすると、社会的な批判を招くこともあります。
事故が発生する
強度不足や構造上の欠陥などが重なると、製品が破損したり部品が脱落したりして、人身事故につながる恐れがあります。荷重を支える構造物や高温・高圧環境で使われる装置では、設計上のわずかなズレが致命的な結果を招きかねません。
また、安全装置が十分でないまま製品化されると、異常時に危険を回避できず、被害が広がるでしょう。こうした事故が一度発生すると、補償対応や信用失墜など、企業への影響は極めて大きくなります。
設計ミスを防止する方法5選

設計ミスを防ぐためには、以下の5点を押さえることが大切です。
- 要件を整理する
- 評価項目をリスト化する
- ダブルチェックを徹底する
- 変更履歴をチームで共有する
- 試作で仮説を検証する
要件を整理する
要件があいまいなまま進めると、設計者ごとに解釈が異なり、図面や仕様書の時点で食い違いが発生します。その結果、製造や検証の段階で「設計どおりに動かない」「性能を満たさない」といった不具合が表面化し、手戻りの原因となります。
顧客の要望や使用環境などを十分に把握していないと、後になって「想定外だった」と指摘を受けることも少なくありません。要件整理では、機能・性能・安全性・コスト・納期といった観点を明確にし、それぞれの優先度を関係者全員で共有しておくことが重要です。
さらに、抽象的な表現は具体的な数値や条件に落とし込み、判断基準をそろえる工夫も必要です。
評価項目をリスト化する
設計段階では多くの検討事項が同時に進むので、何をどの基準で確認するのかを明確にしておかないと、見落としが生じやすくなります。そのため、全体を見渡して品質を評価できるよう、強度・耐久性・寸法精度・安全性などの技術的観点に加え、組み立て性やメンテナンス性といった実用面も含めて整理しておくことが大切です。
こうした評価項目を明文化しておけば、設計検討の場でも議論が具体的になり、誰もが同じ視点で確認できます。また、評価リストは一度作って終わりにせず、過去の不具合事例や顧客からの意見を定期的に反映させて改善することで、組織全体の知識が着実に蓄積されます。
ダブルチェックを徹底する
一人の設計者だけですべて判断すると、思い込みや確認漏れが起こりやすくなります。特に、複雑な構造や多くの部品が関係する設計では、小さな見落としが後に大きな不具合へと発展しかねません。
別の担当者が図面や仕様書を確認すれば、第三者の視点で誤りや不整合を見つけやすくなります。ダブルチェックは一見手間のように感じるかもしれませんが、設計段階での丁寧な確認が後工程のトラブルを防ぎ、品質の向上に直結します。
変更履歴をチームで共有する
設計の過程では、仕様変更や図面の修正が頻繁に発生します。その際に変更履歴を適切に共有していないと、チーム内で情報の食い違いが生じ、旧データをもとに作業を進めてしまうトラブルが起きやすくなります。
そのため、複数の設計者や関連部署が関わるプロジェクトでは、誰が・いつ・どの部分を・どの理由で変更したのかを明確に記録することが欠かせません。変更履歴の共有を怠ると、後で不具合が発生した際に原因を追跡できず、対応が長引く要因にもなります。
こうした問題を防ぐには、バージョン管理システムや共有フォルダを活用し、図面や仕様書を常に全員が最新の内容で確認できるようにしておくことが重要です。
試作で仮説を検証する
図面やシミュレーションでは問題がないように見えても、実際に形にすると予期せぬ干渉や組立時の不具合、想定外の応力集中が明らかになることがあります。特に、新素材の採用や構造の変更を伴う場合は、過去の経験だけでは判断しきれない要素も多く、試作による確認が不可欠です。
小規模でも早い段階で試作を行うことで、設計の弱点を早期に発見し、後工程での手戻りを防げます。また、試作の結果を定量データや観察記録として残すことで、再現性のある改善につなげられます。
さらに、試作の成果を設計チームだけでなく製造や品質保証などの関連部署とも共有することで、意思決定がスムーズになるでしょう。試作について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
関連記事:試作とは?少量生産と量産との違いは?│成功するプラスチック製品開発
設計ミスをしたときの対処法

設計ミスが判明した場合は、次の3点を順に進めてみてください。
- 影響範囲を洗い出す
- 暫定措置で影響を抑える
- 根本原因を特定・改善する
影響範囲を洗い出す
影響範囲を確認しないまま進めると、別の箇所に問題が残り、後から再発することも少なくありません。そのため、どの範囲に影響が及んでいるかを正確に把握し、全体を見渡して対応方針を立てることが重要です。
たとえば、寸法誤差が他部品の組み合わせに支障を及ぼしていないか、設計変更が他仕様や安全基準に抵触していないかなども丁寧に確認します。
暫定措置で影響を抑える
影響範囲を把握したあとは、まず被害拡大を防ぐための暫定措置を検討します。設計ミスの修正には時間がかかるケースが多く、すぐに製造や出荷を止めてしまうと、納期や取引関係に支障が生じます。
そのため、根本的な解決に取りかかる前に、一時的な対応でリスクを抑えることが不可欠です。具体的には、影響のない範囲で生産を継続する、使用条件を制限するといった方法が考えられます。
根本原因を特定・改善する
暫定措置で影響を抑えた後は、設計ミスの根本原因を明確にし、再発を防ぐ体制を整えます。原因を表面的なミスや担当者の判断に限定してしまうと、同様の問題が形を変えて繰り返される可能性があります。
そこで、なぜそのミスが起きたのかを工程全体を通して見直し、検証不足や情報共有の遅れといった仕組み上の課題を洗い出すことが重要です。そのうえで原因ごとに改善策を立て、手順の見直しやチェック体制の強化、設計支援ツールの活用などを進めることで、より再発しにくい仕組みを築けます。
まとめ
この記事では、設計ミスを防止する方法や起こりやすい問題、発生時の対処法について解説しました。要件を整理し、評価項目をリスト化することで、設計ミスを抑えることが可能です。
また、ダブルチェックやデータ共有を徹底すると、認識のズレや思い込みを防げます。そのため、設計ミスによる納期遅延や事故を避けたい方は、この記事を参考にしながら現場の仕組みづくりを見直してみてください。
試作による検証が足りない場合は、外注の活用も視野に入れてみてください。外部に委託すると、社内にない技術やノウハウを取り入れ、試作による仮説検証を効率的に進められます。
たとえば、弊社では粉末造形やナイロン注型などの加工技術を用いて、耐熱性・強度ともに優れたプラスチック試作品を製造しています。弊社の加工技術を紹介した記事も公開しているので、試作でお困りの方は「お問い合わせフォーム」よりお気軽にご相談ください。


