3Dプリンター出力を依頼するメリット3選!発注の流れや注意点も解説

試作品や小ロット製品を効率よく作るために、3Dプリンターを利用する企業・個人が増えています。しかし「どのように業者に依頼すればいいのかわからない」「費用や品質が不安」と悩んでいる方も多いでしょう。
そこで、この記事では3Dプリンター出力を依頼するメリット3選について解説します。発注の流れや注意点も紹介するので、外注を検討している方は最後までご覧ください。
3Dプリンター出力を依頼するメリット3選

3Dプリンター出力を依頼するメリットは、以下の3つです。
- 設備投資が不要になる
- 仕上がり品質が安定する
- 設計支援が受けられる
設備投資が不要になる
3Dプリンター本体のほかにも、材料の調達やメンテナンスには一定の費用がかかります。また、装置を運用するには造形条件の設定や後処理の知識が必要で、担当者の育成にも相応の時間が必要です。
これらをすべて社内で対応しようとすると、初期投資だけでなく継続的な運用コストも膨らみます。外部業者に委託すれば、こうした負担を抑えながら最新の造形技術を活用することが可能です。
さらに、案件ごとに造形方式や材料を選び分けられるため、用途に応じて柔軟な試作を行えます。
仕上がり品質が安定する
造形は温度管理や積層ピッチの調整など、さまざまな要素が仕上がりを左右します。そのため、自社で出力を行う場合、設備の性能や担当者の熟練度によって仕上がりにばらつきが出ることも少なくありません。
しかし、専門業者では経験豊富な技術者が条件を最適化して造形を行うため、寸法の誤差や表面の粗さを最小限に抑えられます。また、業者によっては研磨・塗装・組み立てといった後工程まで一貫して対応できるため、完成品に近い状態で納品してもらえます。
設計支援が受けられる
業者はさまざまな材料や造形技術を扱っており、これまでの経験から「どの形状が造形しやすく、どんな向きで配置すれば強度が保てるか」といった具体的な提案をしてくれます。たとえば、厚みが均一でない部品や細かな凹凸を含むモデルでは、積層の向きを工夫することで層の段差が目立ちにくくなり、表面品質を改善できる場合があります。
こうした設計支援を受けることで、試作品の精度や耐久性を確保しながら、製作期間を短縮することが可能です。3Dデータに欠損や構造上の不具合があると、造形途中でエラーが発生することもありますが、多くの業者では事前にデータチェックを行い、修正にも対応してくれます。
そのため、設計知識が十分でない企業でも、安心して発注できるでしょう。
3Dプリンター出力を依頼する流れ

外部業者に3Dプリントを依頼する場合は、基本的に次のような流れになります。
- 要件を整理する
- データを準備する
- 見積もり依頼を出す
- 発注条件を確定する
- 受入検査を実施する
要件を整理する
目的が試作品なのか最終製品なのかによって、必要な精度や材料が大きく変わります。また、手触りやサイズ感を確かめたい場合と、使用時の強度を検証したい場合でも、選定すべき造形方式や材料が異なります。
そのため、適切な造形条件を設定できるよう、要件を整理しておくことが大切です。こうした情報をまとめておくことで、業者への説明が具体的になり、見積もりや提案内容の精度も高まります。
データを準備する
要件を整理したあとは、造形に必要な3Dデータを準備します。一般的にはSTLやOBJといった形式が使われますが、業者によって対応できるファイル形式が異なるため、事前に確認しておくと安心です。
また、データの精度は仕上がりの品質に直結するため、欠損や重複面、閉じていない形状がないかを確認しておくことも重要です。形状によってはサポート材の影響を受けやすい部分や、造形方向によって歪みが生じやすい箇所もあります。
こうした点を踏まえ、業者に造形方向の提案やデータ修正を相談するのも効果的です。
見積もり依頼を出す
造形方式や材料の選定に加え、仕上げの有無や希望納期など、実際の製作条件をできるだけ具体的に伝えることが欠かせません。条件があいまいなままだと、業者によって前提が異なり、見積もり金額に大きな差が出るだけでなく、納期や品質にも影響します。
また、業者に意図を汲み取ってもらえるよう、試作の目的や検証したい内容を一言添えることも大切です。依頼時にはメール本文に要点を整理し、添付データ名や寸法単位を明示しておくと、やり取りがスムーズに進みます。
発注条件を確定する
見積もり内容を確認し、納得できたら発注条件を正式に確定します。造形方式や材料が確定した後に内容を変更すると、スケジュールや費用が変動する場合があります。
そのため、合意前にすべての条件を再確認し、修正点があれば早めに共有することが大切です。特に、納品形態や受け渡し方法などは後の工程に影響するため、初回のやり取りで明確にしておくと安心です。
また、希望納期に合わせて造形や後処理がどのように進むのか、作業スケジュールの目安を確認しておくと、社内の調整も行いやすくなります。
受入検査を実施する
造形物が納品されたら受入検査を行い、仕様どおりに仕上がっているかを確認します。3Dプリントはデータに基づいて造形されていても、材料の特性や積層方向の影響により、寸法や表面の状態にわずかな差が生じることがあります。
そのため、重要寸法や取り付け部など、機能に関わる部分は丁寧に計測しておくことが大切です。また、目視だけでなく、図面や3Dデータと照らし合わせて全体の形状を確認しておくと、後工程での不具合を防げます。
もし仕様と異なる点が見つかった場合は、速やかに担当者へ連絡し、対応方法を相談してみてください。
3Dプリンター出力を依頼する際のポイント

外部業者へ3Dプリントを依頼する際は、次のポイントを意識することが大切です。
- 装置の特性を理解する
- 優先順位を明確にする
- 想定用途を共有する
装置の特性を理解する
3Dプリンターは、複雑な形状を一体で造形できるという強みがありますが、すべての製造に適しているわけではありません。たとえば、スピードを重視した大量生産には不向きで、同じ形状を量産する際は射出成形などの工法のほうが効率的です。
また、3Dプリンターは金属・樹脂・粉末などの固体材料を積層して形を作るため、繊維や布のように柔軟で連続した素材を一体で出力することは困難です。さらに、造形方向によっては層のつなぎ目が強度に影響することもあり、設計段階での考慮が必要です。
こうした装置の性質を理解しておくと、製造目的に応じた工法を選択できます。3Dプリンターの特性を詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
関連記事:3Dプリンターでできること一覧!作れるものやできないことも解説
優先順位を明確にする
精度・強度・外観・納期など、どの要素を重視するかによって最適な造形条件は変わります。たとえば、見た目の確認を目的とする場合は表面の滑らかさを重視した出力が適していますが、耐久試験に使う試作であれば強度を優先する必要があります。
限られた予算や納期の中ですべての要素を満たすのは難しいため、譲れない要件を決めておくと業者も提案しやすくなります。また、複数の要素を同時に求める場合は、目的を段階的に分けて依頼する方法も効果的です。
最初の試作では形状やサイズを確認し、次に強度や精度を検証する、といったように段階的に試作を重ねることで、無理なく最終的な品質を高められます。
想定用途を共有する
期待どおりの造形結果を得るには、完成品を使う場面を事前に共有しておくことが大切です。用途を明確にしておくことで、業者は条件に合った製造方法を提案でき、結果的に品質や耐久性のばらつきを防げます。
屋外設置や高温環境での使用が想定される場合には、耐熱性や紫外線への耐性を考慮した材料を選ぶなど、リスクを未然に防ぐことも可能です。また、製品に組み込むのか検証用の単体モデルとして扱うのかといった使い方を示すことで、仕上がりの方向性をより正確にすり合わせられます。
3Dプリンター出力を依頼するときの注意点

トラブルを未然に防ぐためには、次の3つのポイントを意識しておく必要があります。
- 合意内容を文書で取り交わす
- 後工程の範囲を取り決める
- 費用が変動する条件を見落とさない
合意内容を文書で取り交わす
3Dプリンター出力を依頼するときは、口頭でのやり取りだけでなく、合意した内容を文書で残しておくことが重要です。造形条件・納期・費用・納品形態などを明確に記しておくことで、双方の認識を正確にそろえられます。
メールの履歴でも構いませんが、できるだけ正式な書面として残すことで、万が一トラブルが起きた際にも確認の根拠を示しやすくなります。仕様変更や追加作業が生じた場合は、その都度改めて合意を取り直すことが不可欠です。
後工程の範囲を取り決める
仕上がりへの満足度を左右するのは、造形そのものだけではありません。3Dプリントでは、造形後の処理をどこまで業者に任せるかが品質やコストに大きく関わります。
サポート材の除去や研磨、塗装、組み立てなどの後工程を明確にしておかないと、納品後に「仕上げが想定と違う」「追加加工が必要だった」といったトラブルにつながりかねません。用途によっては、後処理の仕上がりが外観や精度に影響することもあるため、どの範囲を業者に依頼するかを事前に決めておくと安心です。
たとえば、社内で最終仕上げを行うなら、素材のまま納品してもらうことでコストを抑えられます。一方、展示や顧客への提示が目的であれば、表面処理まで一括で任せたほうが効率的です。
費用が変動する条件を見落とさない
データの修正や再造形が必要になった場合、または仕上げ工程を追加した場合には、費用が増えることがあります。さらに、材料を変更したり納期を短縮したりする場合にも、追加料金が発生するケースがあります。
こうした条件を事前に確認しておかないと、想定外の追加費用が発生し、社内での調整が必要になることも少なくありません。そのため、依頼前に「どこまでが基本費用に含まれるのか」「変更時に追加料金が生じるのか」を確認しておくことが大切です。
3Dプリント業者の選び方

満足のいく仕上がりを得るためには、次のポイントをもとに業者を選定することが重要です。
- 希望する材料に対応しているか
- 類似製品の製作実績があるか
- 見積もりの根拠が明確か
希望する材料に対応しているか
材料にはナイロン・ABS・金属などがあり、それぞれ強度や柔軟性、耐熱性などの特性が異なります。業者によって扱える材料が異なるため、まず自社の用途に合う素材に対応しているかを確認してみてください。
最適でない素材で依頼すると、造形品質の低下や強度不足につながる恐れがあります。また、対応可能な素材が限られている業者を選ぶと、後から仕様変更が難しくなることもあるため注意が必要です。
複数の材料サンプルを用意している業者もあり、実際に手に取って質感を確かめられる場合もあります。使用環境や目的に合わせて最適な素材を提案してくれる業者を選ぶことで、仕上がりの精度を高められます。
類似製品の製作実績があるか
機械部品や医療模型など、得意とする分野は業者によって異なります。また、機能試作やデザイン試作など、試作の目的によっても最適な業者は変わります。
精密な機構部品の試作を依頼したい場合、寸法精度や部品の適合性を重視した実績を持つ業者のほうが安心です。一方で、展示用モデルや外観重視の造形を求める場合は、表面仕上げや塗装に強みを持つ業者が適しています。
過去の製作事例を確認することで、仕上がりの傾向や対応力を把握しやすくなります。実績が公開されていない場合は、相談時に「類似製品の造形経験があるか」を尋ねてみてください。
見積もりの根拠が明確か
見積もりには材料費・造形費・後処理費・データ確認費などが含まれますが、内訳が不明確だと、追加費用が発生した際にその妥当性を判断できません。信頼できる業者であれば、費用の算出方法を具体的に説明し、造形方式や材料を変更した場合の金額差も提示してくれます。
また、納期短縮や特殊仕上げといったオプション費用の条件を事前に示してもらえるかも確認してみてください。説明が丁寧な業者ほど発注後の対応も誠実であることが多いため、金額の安さよりもわかりやすさや姿勢を重視して選ぶことが大切です。
まとめ
この記事では、3Dプリンター出力を依頼するメリットや発注の流れ、注意点について解説しました。外部に依頼することで、初期投資を抑えながら試作品を作ることが可能です。
また、専門知識を持つスタッフの設計支援を受けることで、仕上がりの精度も安定します。そのため、コストや品質を重視して試作を進めたい方は、この記事を参考にしながら信頼できる業者に依頼してみてください。
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