3Dプリンターとは?導入するメリットやモノづくりの流れを解説

モノづくりのスピードと自由度を高めるために、3Dプリンターを導入する企業・個人が増えています。しかし「導入のハードルが高そう」「どのように活用すればいいかわからない」と悩んでいる方も多いでしょう。

そこで、この記事では3Dプリンターについて紹介します。導入するメリットや利用方法、注意点などを解説するので、3Dプリンターに興味がある方は最後までご覧ください。

3Dプリンターとは

3Dプリンターとは、コンピューター上で作成した3次元のデータを元に立体物を作り出す装置です。従来のプリンターが紙に文字を印刷するのに対し、3Dプリンターは樹脂や金属などの材料を層状に積み重ねて、物理的な形ある製品を作り上げます。

もともとは試作品の作成や研究開発を中心に活用されてきましたが、最近では医療や食品といった分野にも用途が広がっています。個人でも趣味の模型作りや日用品の製作に活用する人が増えており、生活にも身近な技術となりつつあるでしょう。

3Dプリンターでモノを作るまでの流れ

3Dプリンターでモノを作る場合は、次の流れで作業を進めます。

  • コンセプトを決める
  • 3Dモデルを作成する
  • スライスデータに変換する
  • 3Dプリンターを準備する
  • プリントを開始する
  • 仕上げ作業を行う

コンセプトを決める

3Dプリンターで造形を始める際は、まず「何を作りたいのか」を明確にしましょう。製品の目的や使用シーン、サイズなどを整理しておくことで、その後の設計や出力作業がスムーズに進みます

たとえば、スマートフォンケースを作る場合でも、単なる保護が目的なのか、スタンド機能も欲しいのかによって設計が大きく変わります。こうした条件がはっきりしていないと、造形後に思ったような仕上がりにならないため、最初の段階で方向性を固めておくことが大切です。

3Dモデルを作成する

コンセプトが決まったら、次は造形に必要な3Dモデルを作成します。3Dモデルとは、製品の立体的な形状をデジタルデータで表現したもので、造形の元になる基本データです

インターネット上に公開されている既存のデータを活用する方法もありますが、一般的には専用のCADソフトを用いて設計します。初心者の方は操作に慣れるまで時間がかかるものの、簡単な形状であれば数時間で作成できます。

スライスデータに変換する

3Dモデルが完成したら、スライスデータに変換します。スライスデータとは、立体的な3Dモデルを薄くスライスし、3Dプリンターが理解できる形式に変換したものです

このとき作成されるのが「Gコード」と呼ばれる制御用データで、3Dプリンターはこれに従って造形を進めます。Gコードへの変換には、専用のスライサーソフトを使用します。

ソフト上では、積層ピッチ(層の厚み)や印刷速度などを調整でき、仕上がりの品質を高めることが可能です。ただし、いきなり最適なパラメーターを見つけるのは簡単ではありません。

初めてスライス処理を行う場合は、まずは初期設定で出力し、必要に応じて少しずつ調整してみてください。Gコードが完成したら、データをSDカードやUSB経由でプリンターに転送します。

3Dプリンターを準備する

スライスデータが完成したら、3Dプリンターの準備に取りかかります。まずはプリンター本体の設置場所を確認し、水平な場所に安定して置かれているかをチェックしましょう

次に、使用する材料(フィラメントや粉末など)を本体に装填します。その後、造形の準備として、ヒートベッド(造形物を載せる台)の温度設定やノズルの予熱などを行います。

プリントを開始する

準備が整ったら、3Dプリンターの操作画面や専用ソフトから該当するGコードを選択し、プリントを開始します。造形中は材料が正常に供給されているか、造形物がベッドにしっかり定着しているかを確認することが重要です

もし、ノズルからフィラメントが出ていなかったり、造形物が浮いているようなら、一度停止して設定を見直す必要があります。造形の進行具合はモニターやステータス表示で確認できるため、造形中の異常に備えて定期的に状態をチェックしましょう。

仕上げ作業を行う

造形が完了したら、3Dプリンターから造形物を取り外します。急いで剥がすと破損する恐れがあるため、ベッドが十分に冷えたのを確認してから、専用のヘラやピンセットを使って慎重に取り外すことが大切です

また、取り外した造形物にはサポート材やバリ(不要な突起)が残っている場合があります。そのままにしておくと、見た目や使い心地に影響するため、ニッパーやヤスリなどで丁寧に処理しておきましょう。

3Dプリンターを使うメリット

3Dプリンターを使うメリットは、以下の5つです。

  • 設計の自由度が広がる
  • 製造コストを抑えられる
  • 開発期間を短縮できる
  • 品質改善に取り組みやすくなる
  • 挑戦しやすい風土が生まれる

設計の自由度が広がる

従来の切削加工や射出成形では、工具の形状や金型の制約により、作れるものの形に限界がありました。しかし、3Dプリンターは層を重ねて造形するため、曲面の多いデザインや内部に空洞がある構造なども、問題なく造形できます

そのため、これまで「作りたいけれど技術的に難しい」と諦めていたアイデアも、3Dプリンターなら実現できる可能性があります。

製造コストを抑えられる

切削加工では素材を削り取って形を作るため、多くの材料が廃棄物となってしまいます。一方、3Dプリンターは必要な部分だけに材料を積み重ねていくため、無駄が生じません

さらに、製品ごとに金型や治具を作る必要がないため、試作品や小ロットの生産でもコストを抑えられます。

開発期間を短縮できる

これまでの製造方法では、設計後に金型を製作し、実際に試作品を作ってから問題点を修正する流れが一般的でした。しかし、3Dプリンターを使えば設計データをすぐに形にできるため、修正のたびに発生していた外注や再手配といった時間的ロスを減らせます

その結果、開発サイクル全体を効率よく回せるようになり、新製品の市場投入までの時間短縮にもつながります。

品質改善に取り組みやすくなる

3Dプリンターを活用すれば、設計から造形までのサイクルを短期間で何度も繰り返せるため、品質改善のハードルが下がります。たとえば、実際に出力した試作品を手に取って確認すれば、図面上では気づかなかった不具合にも迅速に対応することが可能です。

これまではわずかな仕様変更でも金型を作り直す必要がありましたが、3Dプリンターなら設計データを一部修正するだけで再出力できるため、調整を重ねながら理想の仕上がりに近づけられます。

挑戦しやすい風土が生まれる

金型を使った試作では、アイデアを形にするまでに多くの手間と費用がかかるため「失敗は許されない」というプレッシャーが強くありました。しかし、3Dプリンターなら低コストかつ短時間で試作品を作成できるため「まずは作ってみよう」という前向きな姿勢が生まれやすくなります

これにより、従業員が自由にアイデアを提案しやすくなり、チャレンジを歓迎する前向きな風土が社内に根づいていくでしょう。

3Dプリンターを使う際の注意点

3Dプリンターを使う際は、以下の点に注意しましょう。

  • メンテナンスを欠かさない
  • フィラメントを適切に管理する
  • 周囲の安全を確保する

メンテナンスを欠かさない

3Dプリンターは精密な機械であるため、きちんと手入れをしないと造形品質の低下や故障の原因となってしまいます。たとえば、ノズルにフィラメントの残留物が詰まると、印刷中に材料がうまく出ず、造形不良を引き起こします。

また、ベッドが水平に保たれていないと最初の層が正しく定着せず、造形物全体の品質に影響する可能性が高いです。そのため、取扱説明書を確認し、ノズルの掃除やベッドの水平調整といった基本的なメンテナンスを定期的に行うことが重要です。

フィラメントを適切に管理する

フィラメントは湿気や直射日光の影響を受けやすく、保管状態によっては造形品質に大きく影響します。湿気を吸ったフィラメントは印刷中に気泡が発生しやすくなり、表面がざらつく原因となってしまいます。

また、高温下では材料が変形するだけでなく、本来の特性が失われることも少なくありません。こうしたトラブルを避けるためにも、開封後は乾燥剤と一緒に密閉容器に入れ、常温で安定した環境に保管しましょう。

周囲の安全を確保する

造形中のノズルは200℃を超える高温になるため、誤って触れると火傷を負う恐れがあります。さらに、一部のフィラメントは加熱中に微量のガスを発生させることがあり、換気が不十分な環境では体調を損ねる原因になることもあります。

そのため、使用中は誤って触れないようにカバーを取り付け、作業スペースは定期的に換気することが大切です。

3Dプリンターを利用する方法

3Dプリンターを利用する方法は、大きく分けて次の3つです。

  • 機器一式を購入する
  • 短期間だけレンタルする
  • 専門業者に依頼する

機器一式を購入する

製品開発を内製化したいと考える企業や個人は、3Dプリンター本体や周辺機器をまとめて導入することが一般的です。初期費用はかかりますが、導入後はランニングコストを抑えながら、自由に造形できるというメリットがあります

ただし、機器のメンテナンスや材料の管理なども行う必要があり、一定の技術的な知識が求められます。さらに、目的に合わない機種を選ぶと、期待した品質や造形スピードを確保できないこともあるため、導入前には製品を比較・検討することが不可欠です。

短期間だけレンタルする

3Dプリンターの利用頻度がそれほど高くない場合や、使用感を確認したい場合は、レンタルサービスが適しています。購入に比べて初期費用を大幅に抑えられるため、コストをかけずに最新機種や高性能な機材を利用できるのが大きなメリットです

さらに、メンテナンスや故障時の対応はレンタル会社が行うことが多く、専門知識がなくても安心して使えます。ただし、長期間利用すると購入時よりも高額になる場合があるので、短期間で利用する際に検討してみてください。

専門業者に依頼する

社内に設備やノウハウがない場合は、専門業者に依頼するのがおすすめです。専門業者であれば、最新の3Dプリンターを使って造形できるだけでなく、材料の選定から仕上げ作業まで、一連の工程を任せられます

たとえば、弊社では粉末焼結方式(SLS方式)の3Dプリンターを活用し、耐熱性・耐久性に優れた部品を製造しています。さらに、ワークサイズは550×500×500mmと広く、家庭用の3Dプリンターでは製造できない大型部品も造形可能です。高精度かつ高機能な3D造形が必要な場合は、ぜひ弊社の粉末造形技術について詳しく解説したページをご覧ください。

3Dプリンターに関するよくある質問

3Dプリンターを検討している方は、よくある質問についてもチェックしておきましょう。

  • どんな種類がある?
  • 出力できるサイズは?
  • 専門知識がなくても大丈夫?

どんな種類がある?

3Dプリンターには、造形方式の違いによっていくつかの種類があります。たとえば、FDM方式は熱で溶かした樹脂を積み重ねて形状を作る方法で、家庭用から業務用まで幅広い3Dプリンターで採用されています。

一方、粉末焼結方式(SLS方式)は材料となる粉末にレーザー光線を照射し、溶かして固めながら成形する仕組みです。ガラス入りナイロンや金属粉末といった高機能材料に対応しているため、試作品だけでなく実際の製品にも使われています。

造形方式について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

関連記事:【試作開発に!】押さえておきたい!3Dプリンターの5つの造形方式と特徴

出力できるサイズは?

3Dプリンターで出力できるサイズは、使用する機種によって大きく異なります。たとえば、家庭用モデルは小型部品や模型の出力に適しており、造形サイズは20cm四方程度です。

一方、産業用途に特化した機種では、50cm四方を超える造形にも対応したものがあります。ただし、造形サイズが大きくなるほど機器本体も大型化するため、設置スペースや目的に合わせて機種を選ぶことが大切です。

専門知識がなくても大丈夫?

近年、3Dプリンターの操作性が向上しており、基本的な操作であれば初心者でも簡単に扱えるようになりました。たとえば、3Dプリンターには自動調整機能が付いていることが多く、温度設定や造形速度なども初期設定のままで問題なく使えます。

また、これまでは専用のCADソフトを使って3Dデータを設計する必要がありましたが、最近ではインターネット上に完成済みのデータが無料で多数公開されています。しかし、高品質な製品を開発する場合は、機器のメンテナンスや細かいパラメータ調整などの知識が必要です。

まとめ

この記事では、3Dプリンターを導入するメリットや利用方法、注意点について解説しました。3Dプリンターを活用することで、設計の自由度を高めながら製造コストを大幅に削減できます。

また、従来の製造方法と比較すると、開発期間を短縮して品質改善にも取り組みやすくなります。そのため、製品開発の効率化を図りたい方は、3Dプリンターの導入を前向きに検討してみてください。

「強度や耐熱性に不安がある」「試作だけでなく最終製品としても使いたい」といった理由で導入に踏み切れない場合は、専門業者への依頼がおすすめです。弊社では高機能SLS方式3Dプリンターを活用し、ガラス入りナイロンによる高強度・高耐熱な試作品を製造しています。さらに、550×500×500mmの大型ワークサイズにより、大型部品も分割せずに一体造形で仕上げることが可能です。試作品だけでなく、最終製品としての用途でも使用できるので、製品開発を効率化したい方は「お問い合わせフォーム」からお気軽にご連絡ください。