製品品質向上の鍵!【樹脂の公差】金属との違いや工法による精度の違い

樹脂は広範な産業分野で利用され、様々な製品の製造に使われています。

製品の品質を確保する上で、公差は非常に重要な要素です。

最近では、従来金属を使用していた部品を樹脂に代替する樹脂化が進んでいますが、その際に注意しなければいけない一つが公差です。

樹脂は金属に比べ、環境の影響を受けやすく反りや収縮が生じやすい性質があります。そのため、金属と同じような公差を設定すると、指定された精度が出ない可能性もあります。

この記事では、公差の種類や金属と樹脂の精度の違い、さらに工法による違いについて解説します。

公差とは?

公差は、製品の設計寸法と製造された実際の寸法との間の許容範囲を指します。

公差の範囲内であれば、製品は設計通りの性能を発揮し、正確な機能を持つことが期待されます。

公差は、原料の特性、製造プロセス、設計目的によって異なります。

公差の種類

■一般公差(普通公差)

公差の記載がない寸法に対して、一定水準の等級を取り決める為に使用する公差。JIS規格で規定されたものを使用する場合や独自の公差表を使用することもできます。

基準寸法区分公差等級
精級(f)中級(m)粗級(c)極粗級(v)
0.5以上3以下±0.05±0.1±0.2
3を超え6以下±0.05±0.1±0.3±0.5
6を超え30以下±0.1±0.2±0.5±1
30を超え120以下±0.15±0.3±0.8±1.5
120を超え400以下±0.2±0.5±1.2±2.5
400を超え1000以下±0.3±0.8±2±4

※JISでは精級、中級、粗級、極粗級の4種類があり、それぞれf、m、c、vの記号で表されます。

■寸法公差

製品の寸法に許容される誤差を示します。長さや幅などの寸法において、製品が許容範囲内であるかどうかを定めます。

■幾何公差 

製品の形状・大きさ・位置関係に対する許容範囲を示します。形状やサイズ、位置の許される誤差を定義しています。

■はめあい公差

軸と穴がはまりあう際に許容される誤差を示します。軸径と穴径の組み合わせが抜き差しできる余裕があるか、一度はめると外れないかなどです。

金属と樹脂の精度の違い

軽量化の必要性により、樹脂化が進んでいる昨今、素材による精度の違いの知識も必要になります。

金属は強度、硬度、耐久性に優れており、高い精度を出すことができます。

一方、樹脂は柔軟性と軽量性に優れていますが、温度変化や湿度、加工後の応力によって影響を受けやすく、特に強化材が添加されている樹脂では、反りや収縮などが起こりやすくなります。

そのため、金属と同じ寸法公差を設定すると樹脂では対応できない可能性があるので注意が必要です。樹脂の場合、高い精度が要求される用途には限界があることを理解しておくと良いでしょう。

※公差の限度はメーカーによります。公差設定は各メーカーに確認してください。

工法による精度の違い

樹脂の種類によって、また工法によっても公差は異なります。高い精度を要求されている場合は、工法を選択する際にも注意が必要です。

樹脂成型の主な工法は以下の通りです。

  • 切削加工
  • 射出成型
  • 真空成形
  • 粉末造形(3Dプリンター)

切削加工が一番高い精度の実現が可能です。精密さが要求されている場合は切削加工がいいでしょう。ただ、メーカーの保有している機械や技術により異なります。

次に射出成型。射出成型の場合も使用する材料や金型の品質によります。

下記は当社のウレタン注型ナイロン注型粉末造形の普通寸法公差です。JISの一般公差でいうと粗級・極粗級あたりの等級になります。

特にナイロンは収縮により変形がしやすい特徴があるため、ナイロン注型は、高い精度を求められている製品には適さない場合があります。

※公差の限度はメーカーによります。公差設定は各メーカーに確認してください。

まとめ

樹脂製品の公差管理は、製品の品質向上と正確な機能の発揮に欠かせない要素です。

公差が緩すぎると、製品の組み立てや動作に問題が生じる可能性があります。逆に、公差が厳しすぎると、製造コストが上昇し、製品の製造が難しくなる場合があります。

製品設計や要件に応じて、適切な素材と工法を選択することが重要です。最適な材料・工法の選択により、製品の性能と品質を最大限に引き出すことができます。

当社は、1984年の創立以来、多種多様なプラスチック製品の試作開発を手がけてきました。長年にわたって蓄積した経験と知識を活かし、ニーズに合わせた最適な材料・工法を提案しています。

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